2008年3月31日月曜日

播州ラーメン 畑やん@西脇

予算¥550(しょうゆラーメン¥550)

昼過ぎから降り続く雨は今も猶止む気配は見せず、重みを増した革ジャンはずっしりと肩にのしかかり、濡れた体を擦り抜ける風はこの身を凍えさせていった。一時はかき揚げそばにより安らいだ体も、今となっては何の温もりも留めてはいなかった。
濃く曇ったシールド越しに前を行くテールランプを必死になって追う。それを見失ってしまっては道の軌跡すら判らない。そんな激しい雨に打たれ続け、最早歯の根も合わなくなっていた。今、この時に、泉より女神が出て来ようとも、ランプから精霊が現れようとも、ただ求めるものは雨上がりの雲間から覗く星空と喉を焼くほど熱い一杯のラーメンであった(望みが三つ叶えられるなら、後はお金か?)

"播州ラーメン 畑やん"
激しく打ち続ける雨を逃れ、店内へと駆け込む。
"雨、大変でしたね"と熱いおしぼりが三本目の前に並ぶ。"使ってください"と。弱っているときにはこんな気遣いが嬉しい。その温もりが痺れた指先の感覚をゆっくりと戻してゆく。
少ししなびた葱に柔らかすぎるほど茹でられたもやし、脂身の多いチャーシュー。一番の特徴はタップリの玉葱から生まれる甘いスープ。温かな優しい甘さが体に染み渡る。播州ラーメンのこの甘さを嫌う人も多いが、俺はかなり好きだ。もちろんすべて飲み干し、暖を取る。椅子にかけられた革ジャンも少しは身軽になったであろうか?会計を済ませ身支度を調える。窓の外を眺めた店主から"雨も上がったみたいですよ"と声をかけられる。この温もりこそは六甲を越えるまで持てばいいのだが、そんなことを思いながら"お気を付けて"の声に答えて店を後にした。

播州ラーメン 畑やん しばざくら店
住所:兵庫県西脇市野村町786-2 ラーメンマップ
電話:0795-22-5966
営業時間:11:00~15:00、17:00~22:00
定休日:第1、第3水曜

2008年3月29日土曜日

荒金酒店@新在家

予算¥1,080(キリンラガー大瓶¥380x2、おでん(大根¥100、ごぼてん¥100、すじ¥120))

春にはほど遠いのにこの温さは何なのだろうか?何とはなしに明石にでも行こうかと思って出かけた冬のある日のこと、明らかに間違えた装いであることに気付いたのは家を出て10分も走らぬ内であった。水道筋を過ぎる頃には全身汗だく、喉はカラカラ、求めるものはキンキンに冷えたビール、そんな状態になっていた。
しかし、夕方というにもまだまだ早い時間。そうそう酒を呑ませる店もない。春日野、西灘、大石と知った立ち呑み屋を巡るが暖簾の上がる店は無い。まぁ新在家まで行けば何処か開いているだろう、と向かった。

"荒金酒店"
ガラス戸から覗くと先客は三人。冷蔵庫からキリンラガーを取り出し、末席に着く。それと何もアテが無いというのも寂しいのでおでんを頼んだ。顆粒のダシの素を溶かしただけの風味だ。面取りや下茹でもされていない大根は大して味が染みているわけでもないのに煮くずれ、すじやごぼてんは今入れたばかりでないのか?というほどダシを感じない。
まぁビールさえ飲めれば文句は無いわけで、何なら塩でも良いわけで、しかし、味気ないのも確かなわけで、取り敢えずもう一本栓を抜いた。

荒金酒店
住所:神戸市灘区浜田町3-5-14 立ち呑みマップ

2008年3月27日木曜日

総本家 橘屋@大垣

予算1,923(どてかつ¥95、ねぎま¥105、レバー¥95、タン¥95、ナンコツ¥126、ドテ煮¥294、生小¥399、ねのひ自然水仕込生貯蔵酒(300ml)¥714)

ここ大垣もかつては城下町であったからには、少なくとも二、三軒くらいは駅前に立ち呑み屋があるだろうと降り立ったわけだが。。

"総本家 橘屋"
サクッと呑んで帰るのに"これは"という店を見付けらぬまま、大垣城まで辿り着いてしまった。看板に大きく書かれた"どてかつ"の文字が気になっただけ、そんな消極的な理由で橘屋の戸を潜った。

焼き場を囲みコの字型に囲んだカウンター、ガラス戸を開けるとそんな狭い空間に椅子が並ぶ。後から訪れるかも知れない客に気を遣い少し奥へと進んだ。腰を落ち着け、メニューを見渡す。そこには焼鳥屋のハズなのだが矢鱈と居酒屋メニューが名を連ねる。
"しまった、地雷を踏んでしまったか?"と思いはしたものの、他にめぼしい店もなかったワケで"まぁ、軽く酔えればいいか"などと諦め半分で何品か選んでいった。
焼鳥はすべて塩、そしてもちろん"どてかつ"を、それに併せてドテ煮も追加した。
先ずは焼鳥から出てくる。さほど期待もせずにいたワケだが思いのほかイケる。そう思っているうちに、次々と目の前に皿が並んでいく。"おい、はえーよ、もっとゆっくり呑ませろよ"と心の中でツッコミを入れる。遂にビールを飲み干す前にすべての品が揃ってしまった。
冷酒を追加し、どてかつ、ドテ煮をつまむ。予想通りどちらもかなり甘く仕込まれた八丁味噌味。その上冷酒まで甘口だ。甘いアテには甘いサケが合うのかも知れない、そう思いながらラベルを見ると名古屋の酒造メーカーであった。
何処までもこの甘さが付いて廻る。おそらくは関ヶ原を越えるまで。

総本家 橘屋
住所:岐阜県大垣市東外側町2-13 焼鳥マップ
電話:0584-81-8166
営業時間:17:00~22:30
定休日:日曜

2008年3月24日月曜日

丸八寿司@名古屋

予算¥1,730(上ランチ(マグロx2、イカ、サーモン、数の子、ハマチ、エビ、イクラ、鉄火巻、赤だし(11:00~15:00))¥1310、生中¥420)

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おれは金沢を目指していたと思ったらいつのまにか名古屋に向かっていた』

な… 何を言っているのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

"丸八寿司"
夏の匂い立つ激しい雨とは違う、音のない冬特有の雨がゆっくりと降り注ぐ。傘を差すほどではないが、差さずに歩き続けていればやがて体を蝕み、歩く気力を奪い尽くしてしまう、そんな雨が名古屋の街を鈍く暗い色へと染め上げていた。
そんな中、この近くに24時間営業の寿司屋が在ることを思い出す。それは金沢にて食べるはずだった新鮮な日本海の魚介達を逃してしまった事に対する辻褄合わせ、そんな気がしていた。

店へと至る仄暗く急な階段の前にはトロ箱にマジックで殴り書きされただけ、という素敵な看板達が並ぶ。
"上ランチ1250税別 中ランチ950税別"、"寿司職人募集"、"イージス艦巻も社保庁巻もあります"
もう何でもアリといった有様だ。その中でも一番目を惹いたのは"ビール大びん400円自分でぬいたら350円"の文字。そんなところが酒飲みだなぁ、と我ながら思う。

雨の日の二時過ぎ。客は他に誰もいない。頼んだのは上ランチと生ビール。目の前で握られた寿司が次々とカウンターに並べられていく。下駄に盛りつけないスタイルの店は、学生時代に実験の合間抜け出して女の子達と六甲道まで食べに出かけた時以来だ。あの店も震災で潰れ、今はない。
何となくしんみりとした気持ちで、寿司を一つ放り込む。酢飯が気に入らない。その酢の具合やほのかな甘み、濡れた真珠のような艶やかさ、それらが全て足りない。練り置かれたワサビも香りが飛んでおり、ネタをめくり確認しないことにはサビ抜きか?と思うほどであった。赤だしもインスタントのような風味で何とも味気ない。
とはいえ、回転寿司よりは美味く、この値段であるのだから文句を言うほどのものではない。仕事帰りに二、三貫ツマミ、ビールを自分で抜く。近所にあったのであればそんな使い方でよく利用したであろう、そんな店であった。

丸八寿司名駅店
住所:愛知県名古屋市中村区名駅4-21-5 寿司マップ
電話:052-563-0608
営業時間:24時間
定休日:無休

2008年3月22日土曜日

ファミリーレストラン ちちや@土岐

予算¥790(上かつ丼(てり)¥790)

ジョモさんと交わした瑞浪名物あんかけカツ丼についての話題。その流れにより、"ちちや"のある隣町、土岐を訪れた。その"ちちや"では甘辛くとろみのあるソースのかかったカツ丼を出すという事だった。
"てりかつ丼のために名古屋かよ lol"などと元カノには小馬鹿にされ、"イヤ、メインは寺巡りだから"などと言い訳る。だが確かに名古屋へと向かった大きな要因の一つではあった事は事実だ。

"ファミリーレストラン ちちや"
生憎の小雨の中、駅から真っ直ぐに続く道を傘も差さずに歩いていた。お昼の買い出しに出てきたと思われる2、3人の客が並ぶ団子屋を過ぎ、朝から降り続く雨により水量の増した小さな川を越えると間もなく、細い路地裏に"ちちや"の看板を見付けた。駐車場を抜け、まるで従業員口のような扉を開く。本当にここから入って良いのだろうか?と一瞬怯むが、"いらっしゃいませ"の声に出迎えられた。

頼んだのは上かつ丼。何が"上"かというとカツが"やわらかい豚ヒレ肉"になるという。パ軒もヒレ、小川家もヒレ、ときたからにはここもやはりヒレといくべきであろう。
ご飯の上には刻まれたキャベツ、カツ、その上には赤みを帯びた薄茶色のソース。その色目からケチャップが入っているのかな?と思いながら一口。かなりの甘みが広がる。そして遅れて訪れる僅かな酸味。デミグラスソースにトマトケチャップ?だがこの甘みはケチャップだけでは無さそうだ。おそらくは何か甘味料を加えているのだろう。カツはソースカツ丼に皆共通してみられる非常に細かいパン粉で揚げられたもの。この衣の香ばしさは好きなのだが、肉が良くない。切り分けられた肉の断面は黒っぽく変色しており、食感はハムに近い。臭いも少しきつく、明らかに古くなった肉であった。

それにしてもこの単調な甘ったるいソースが好みには合わない。ここも名古屋文化圏であるから名古屋によく見られるような味付けだ。名古屋は味噌文化と言われるが、俺に言わせれば甘味文化だ。何でも甘ったるく仕上げられている。そこに胡椒などの他の味覚が加われば"手羽先"や"ミラカン"のように中毒性のあるジャンキーな味わいになるのだが、甘いだけではどうも受け付けない(彼女はミラカンもイヤだと言っていたが)。
他にも味乃家、みのりや、などがあるらしいが試してみることはおそらく無いであろう。

あんかけカツ丼にするべきであったか、と思いながら、帰りはちゃんと正面から出ていく。見上げると空は益々色を失い、打ち付ける雨は更に激しさを増していった。まぁ、そんな空も今の気持ちに合っていると言えないこともなかった。

ファミリーレストラン ちちや
住所:岐阜県土岐市泉町久尻32-11 かつ丼マップ
電話:0572-55-3214
営業時間:11:00~14:30、16:30~20:00
定休日:月曜

2008年3月20日木曜日

Fou de Vin@阪神芦屋

予算¥6,250(男1人女1人)(05 ブルゴーニュ(ルシアン・ミュザール)¥950、04 バルベラ・ダルバ(マルカリーニ)¥950、00 CHオステンピカン キュヴェ・リュックリス¥1,550、本日のおまかせ肴三種盛り(2人分)(オクラのピクルス、自家製レバーパテ、ミラノサラミ・スライス、砂肝のコンフィ)¥900、トマトソースのパスタ¥900、オムライス¥1,000)

イモウトさんからのValentine's Dayのプレゼント。ロイスのポテトチップチョコレートとグリューヴァイン。そのお返しに託けてFou de Vinへと誘った。

"Fou de Vin"
色取り取りの花々が芦屋の暗がりに浮かび上がる。そんなワインショップの二階にバーは在った。
酒蔵の古材で造られたという落ち着いた空間。カウンターには常連達が並び、グラスを傾けながらマスターと静かに言葉を交わす。その中でもこちらにも気を払うのを忘れない。

まず最初のオーダー、バルベラ・ダルバ マルカリーニ。フルーティーな甘みと酸味が調和しており、花のような芳しい薫香が広がる。タンニンはほとんど感じず、多少物足りない気もするがまとまりが良いワインだ。イタリアワインの良いところが出た一杯。そんな感じだ。
続いては、CHオステンピカン キュヴェ・リュックリス。その鳩の血のように深く、鈍く輝くような紅色。グラスを近づけるだけでカシス香やスパイシーな香が漂う。この時点で好きなタイプと予想された。口に含むと一層香り立ち、ふくよかな甘み、豊かなタンニンが広がる。これは私の中でのボルドーのイメージ通り、といったワインだ。美味いなぁ、と思いつつ呑み進めるが、次第にタンニンを強く感じ出す。もう少し軽めの方が好みなのかも知れない。

料理もそれ専門のレストラン程ではないにしても意外としっかりとしているし、控えめな照明のしっとりとした雰囲気、出しゃばらず気を配った接客、酒屋がやっているだけの事はあるワインの質、どれをとっても中々良い店であった。芦屋にはひっそりとこの様な店が点在する。羨ましい限りだ。

Fou de Vin(フー・ド・ヴァン)
住所:兵庫県芦屋市大桝町7-13 セレーノ芦屋2F Barマップ
電話:0797-25-5351
営業時間:18:00~24:00
定休日:水曜
公式サイト

2008年3月17日月曜日

酒房 橋@西灘

予算¥800(ABカレー¥800)

あれはもう昨年の話であったであろうか。橋のおっちゃんがお亡くなりになった、という噂を小耳に挟んだのは。
その真偽を確かめるべく幾度か足を運んだのだが、扉は閉ざされたままということが続き、不安はより一層大きく脹れあがっていた。
そして今日、漸く営業中であることを示す暖簾に出会うことが出来た。

"酒房 橋"
暖簾を潜り、そこに見慣れた顔を探す。
しかし、その行為は僅かな期待を打ち砕き、奥さんが後を引き継ぎ営業を続けているという話は真実であったということを思い知らせるだけであった。無論、尋ねてみたわけではない。だがカウンターの奥にいるべき人物がいない、それだけで確認は十分だった。

いつも通りのABカレーを頼む。前と変わらぬ少し硬めに炊かれたライスの上には前と変わらぬ揚げたてプリプリのエビフライが2本並ぶ。その上には以前と変わらず具が完全に無くなるまで練り上げられたルーが盛りつけられる。少し酸味が増え、香辛料の刺激が強くなったか?比べるとコクが無くなったような気がするのは思い出が美化された所為か?
何より"ルー足りてますか?足りなければ言ってくださいね"と優しく囁くあの声が二度と聞けないかと思うと、少し寂しかった。

酒房 橋
住所:神戸市灘区灘南通4-1-5 カレーマップ
電話:078-881-8466
営業時間:11:00~13:30(夜は居酒屋)
定休日:日曜、祝日

2008年3月15日土曜日

和風ステーキ 梅はら@高砂

予算¥1,050(梅はら弁当¥1,050)

あまりの接客の悪さに数名が腹を立てながらの訪問と相成った訳だが、丁度昼時ということも重なり、更にかなり待たされるという事態となっていた。
その上悪いことは続くもので、この度12名で訪れたというのにソースが無くて6名分の"かつめし"しか用意出来ないという事だった。

"和風ステーキ 梅はら"
先にかつめし組6名が呼ばれ、その他ステーキ組は更に10分ほど待たされた後、座敷へと通されることになった。狭く急な階段を抜け二階へと上がる。廊下には襖が並び、中からは女性達の談笑が漏れ聞こえる。その横を抜け通された和室には座卓が二つ並び、それぞれ4枚の座布団が敷かれていた。6人で使うには少し広すぎるかな、というくらいの空間での寛いだ食事。馬鹿話にも花が咲く。

肉質は期待していた程良いものではなかったが、トータルで見ればボリュームも良い感じでそこそこ良かったのではないだろうか。これにコーヒーでも付いていれば嬉しかったのだが、回転を上げるためには仕方がないのであろう。

次回こそは食べ損ねたかつめしでも試しにもう一度訪れてみたい。もちろん、こんなに待たされるのは御免だが。

和風ステーキ 梅はら
住所:兵庫県高砂市百合丘138-1 洋食マップ
電話:079-443-4906
営業時間:11:00~14:00、17:00~21:00
定休日:年中無休

2008年3月13日木曜日

大衆食堂 稲田屋@福山


予算¥860(関東煮¥140x2、瓶ビール大¥580)

朱華園だけでは満たされず、ビールに関東煮でもつまむか、と稲田屋を目指した。

"大衆食堂 稲田屋"
寂れた商店街の一角にその店はあった。入り口横では大鍋が湯気を上げ、モルタル仕上の床に木製の長テーブル長椅子が並ぶ。そんな歴史を感じさせる素敵な空間。壁に貼られた安っぽいプラスチックの定価表も店のナリを表していた。
"関東煮"。それを頼むつもりで来たワケだが、はて、困ったな。なんと読めばいいのだろう?いざ頼む段にきて疑問がわいた。"かんとだき"では"おでん"である。ここでの"関東煮"は牛や豚のホルモンを串に刺し煮込んだものということは知っていた。これもそのまま"かんとだき"で良いのだろうか?それとも"かんとに"?いっそ"かんとうに"?そんな考えがグルグルと頭の中を巡るが、恐る恐る、"かんとうに"と言ってみる。すぐさま"何本?"と聞かれ"2本"と答える。何のツッコミも訂正も復唱もないので果たして合っていたのかどうかは疑問のままで残されてしまった。

串に刺し並べられたシロとフワは醤油で真っ黒に染まり、佃煮のように甘い。ここまで甘いと酒の肴といった感じではないのだが、ホルモン独特の臭みもなく、それでいて旨味はしっかりと感じられ、別々に食べる分には美味い。そう量を食べたいとは思わないが、こんなジャンクなものもたまに食べたくなる、そんな味であった。
辛味の抜けた一味を振りかけ、先に関東煮を平らげ、それからゆっくりとビールを楽しんだ。

斜向かいに座っていたおじいさんは酒に呑まれ、"今日は酔っているから、酔っているから"と何度も何度も店員に謝る。店の奥からは肉皿とネギ、ビールを追加する声が響く。
若いコは一人で肉丼に関東煮を数本を掻き込み、数人のグループは肉皿、関東煮を肴にビールを次々と空けていく。そしておじいちゃんは皿に残った汁を舐めつつ杯を重ねる。老若男女、皆それぞれの使い方がある"稲田屋"。実に味わい深い店である。

大衆食堂 稲田屋
住所:広島県福山市船町1-18 食堂マップ
電話:084-925-1392
営業時間:10:30~20:00
定休日:第2水曜、木曜
公式サイト

2008年3月11日火曜日

おつかい

日帰り365km
ルート:第二神明-加古川BP-姫路BP-太子竜野BP-R2-r121-r64-R250-r568-r458-r32-R250-タマちゃん-R250-伊部-天津神社-R2-熊山遺跡-大滝山福生寺(福寿院)-R2-R53-道の駅みやま公園-r22-r45-R2-岡山ブルーライン- r260-R2-太子竜野BP-姫路BP-加古川BP-第二神明

冬朝の体の芯まで凍みいる寒さと、蟻列の如き通勤の渋滞を避けるために遅めに出発の時刻を決めていた。外は抜けるような晴天。この時期のそれは寧ろ寒さが増すワケで、あまり望ましい事とはいえなかった。
その身を切るような寒さも気分を萎えさせる一因ではあるのだが、何よりウィンカーの調子が悪くなるということが、バイクに乗りたくない一番の理由である。おそらくは接点グリスの劣化。グリスアップしてやれば良いだけなのだが、それすら寒さにより躊躇させられている。そして温い時期は問題がないので放っておく、という悪循環に突入してしまっていた。当然、今からそんな作業をしようという気などほとほと無い。どうせ気温さえ上がれば何の問題も無いわけだから。

第二神明からバイパスへと続く眠気を誘う以外の何物でも無い道に飽き飽きし、海沿いのワインディングを目指していった。迂闊にも記憶違いにより七曲がりを逃すルート取りとなってしまったが、そのまま西へと向かう。七曲がり、万葉岬へと続く道に比べればたいしたことはないが、相生から赤穂の間も捨てたモノではない。そこは眺望や変化には乏しい道だが、車の通行は無いに等しいので狭い割には気持ちよく走ることが出来る。このシーズンR250は牡蠣渋滞する事があるので、こちらの方が早く抜けられるというのも魅力的だ。

というわけでアッという間に日生へと差し掛かる。道沿いには相変わらずのタマちゃんの看板のオンパレード。しかも今年はやけに綺麗な看板になっている。儲かっているんだなぁ、と思っていると駐車場まで増設されていた。時刻は11時半にまだ早い頃、待たずに食事を済ませると、今日の目的地、伊部へと向かった。

父より頼まれていた備前焼の徳利を購入する。流石に窯元は安い。もっとも、検品で撥ねられた品だろうが贈答品ではないのでこれで十分十分。
これにより本日メインのおつかいを済ませたわけで、後は自由時間となった。これからの予定は取り敢えずは熊山遺跡を訪れ、みやま公園で干物を買う。この二つが最優先事項。それから気分がのれば、こちらを訪れたときの定番ルートである金甲山と種松山から鷲羽山スカイラインを走る。
しかし、この速度と共に襲い来る寒さと、落ち葉で荒れているであろう金甲山を想像すると気分は萎える一方だった。

天津(あまつ)神社
住所:岡山県備前市伊部628 神社マップ
電話:0869-64-2738
祭神:少彦名命、菅原道真
本殿:【備前市指定文化財(建造物)】(S56.7.24指定)一間社、流れ造、延宝6(1678)
拝殿:割拝殿(1738)絵馬殿を兼ねる

2008年3月9日日曜日

朱華園@福山


予算¥530(中華そば¥530(3月1日より値上げ))

尾道では寺巡りに忙殺され立ち寄り損ねた店、朱華園。行列せずには食べることが出来ないそのラーメンも、ここ福山では昼を外せば並ばなくても良いということだった。

"朱華園"
ぐるりと周り細い路地裏に現れた入口はまるで北京料理屋の様な造りで、薄汚れた朱の暖簾が掛かっていなければとてもラーメン屋であるなど想像も出来ない外観だ。
時刻は二時を廻っており、店の中は想像以上に閑散としている。店内を見渡すと、窓際のテーブル席では老人が一人ラーメンを啜り、厨房に背を向けるように据え付けられたカウンターの前にはおばちゃんらが数人手持ち無沙汰に突っ立っている。
"食券を買ってください"と言われ、"中華そば"の一言と530円を差し出し、1番と刻まれたプラスチックの札をもらった。

背脂が薄く層を成す鶏ガラ醤油スープに細めの平打ち麺。トッピングは刻みネギとシナチク、脂身のないチャーシュー、そして一番の特徴でもあるゴロゴロと盛られた大きめの背脂の塊。
しっかりと感じられる麺の食感と甘みのある背脂醤油は中々に好みである。強いて言うなら麺はもう少し弾力が欲しいというくらいか。食べ進めていくと、残された背脂の塊が気になり出す。ちょっと抵抗はあったもののその塊を口に放り込む。それを噛み締めると背脂特有の甘みが広がる。思ったより脂っぽさは感じない。臭味もない。すき焼きに使った牛脂を好きだった子供の頃を思い出させるトコまでほのかに甘かった。

しかし、背脂はおろか汁まで全て飲み尽くしてもまだ少し足りない。もう少しボリュームが欲しかった。
                              
朱華園 福山元町店
住所:広島県福山市元町6-7 ラーメンマップ
電話:084-928-5780
営業時間:11:00~19:00
定休日:第3水曜、木曜
参考サイト

2008年3月7日金曜日

中華そば 珍元@仏光寺壬生川

予算¥700(中華そば(並)¥450、餃子¥250)

吹き荒ぶ吹雪に凍えた身体は熱いラーメンを求め、気持ちはそれに答える。ここ京都には多くのラーメン屋が建ち並び、選択肢は数限りなくあった。その中から選んだのはオクさんオススメの店"珍元"である。

"中華そば 珍元"
かなりニンニク臭いと聞いていたのだが全然その様なことはない。寧ろニンニクの香りなど全く感じない。豚骨鶏ガラのスッキリした醤油ラーメンに背脂の甘みと生姜の香りが広がる。生姜風味というのは変わってはいるが、好きな味。懐かしく、どこかで食べたことはあるがそれが何処であったか思い出せない、そんな味である。盛りも良いし、これで450円ていうのは安い。
カウンターに置かれた味噌を加えるとニンニクの風味が加わり、コクと深みが出る。昔は最初から入っていたのかな?等と思ったが、どうやらそうではないらしい。オクさんは"スープは白かったはずだ、二十年前の話だが"と言う。
続いて餃子だ。この餃子は一風変わっている。例えるならミナエンタウンにある"吉林麺点"の野菜饅に似た味。野菜の甘みにオキエビの香ばしさが広がる。餃子らしくは無いがたまにはこんなのも良い。

曾て住んだ町にこの様な店があるなど知らなかった。壬生寺を訪れたついでにまた訪れたい。

中華そば 珍元(ちんげん)
住所:京都府京都市中京区壬生相合町20 ラーメンマップ
電話:075-801-9589
営業時間:11:00~23:00
定休日:月曜
参考サイト

2008年3月4日火曜日

チンタ 醉宵食堂@畑原市場

予算¥5,800(男1人女1人)(レタスナシゴレン¥750、オムライス¥800、山陰産 三角あげ焼¥450、ギンナン¥400、生ビール(HEART LAND)¥500x2、ホッピー¥480、本当のチューハイ¥480、電気ブラン¥500、夕焼チュー¥480、梅酒¥480)

ルンルンから神戸で用事があるから呑みませんか?とのお誘いが。何処かオススメの店はない?と聞かれて思い浮かんだのが、ご無沙汰している"汽笛亭"さんと移転してから一度も訪れていない"チンタ"さんであった。"飯は?"と聞くと"食べていない"とのことなのでチンタへと向かった。

"チンタ 醉宵食堂"
"スタンド・チンタ・リカーホール" 今では"モンク"さんが営業している場所にあった時はそんな名前であった。トイレもなく、止まり木すらないスタンディングバー。そんな姿は今でも変わらずモンクさんに受け継がれているが、肝心のチンタさんではその独特の雰囲気が今では失われてしまっているのではないかと未だに訪れずにいたのかも知れない。
しかしそんな思いは杞憂であった。扉を開けて広がるのは、世に溢れる凡百もの創作居酒屋といったものに埋もれることもなく光を放つ個性的な空間であった。

メニューを見せ、何を食べる?と聞くと、"レタスナシゴレンとオムライスで迷っている" "じゃあ、二つ頼んで分けようか?" "それ素敵、シェアして食べよ"と言うことで早々と飯もんは決まった。ツマミは何が良いかな?と考えていると"三角あげ焼"というのが気になったので聞いてみる。厚揚げを焼いたヤツなそうだ。それを頼んだのは"五郎"にて"栃尾揚げ"を食べ損ねたからだ。三角という時点でそれとは違うと分かってはいても頼んでみた。
ナシゴレン、オムライス共にボリュームがあり美味しい。強いてどちらが好みかといえば、ピリ辛のナシゴレンであろうか。そして"あげ焼"。美味しいのだがシンプルなだけに想像の域を出ない。より一層"栃尾揚げ"への思いは募る。次に新潟に立ち寄った時には食べねばなるまい。もちろん栃尾でだ。
ちょっとばかり酔いが廻り、屋久島話も尽きた辺りでお開きとなった。後で気付いたが、飯もので既に腹を膨らませてしまったので鶏がメインの店なのに頼むのを忘れていた。次こそは忘れずに鶏を頼みたい。

チンタ 醉宵食堂
住所:神戸市灘区水道筋2-2 畑原市場内 居酒屋マップ
電話:078-882-2050
営業時間:18:00~25:00
定休日:月曜
公式blog
チンタ醉宵クラブバンドLive@チンタ
チンタ本店@畑原市場

2008年3月2日日曜日

温泉?@まぶ湯

リスペクト自生山那谷寺霊と共に霊峰月山三度目の立ちゴケワインディングロード続・ワインディングロード続続・ワインディングロード交通規制@富士山スカイライン三十年来の悲願@富士山

10泊11日
十日目248km

新五合目-富士山スカイライン-r152-r23-R246-R1-丸天-r144-R414-r17-r127-r18-r17-安楽寺-楠の湯-R136-林道-r18-r127-r17-R414-r163-R1-R52-r75-r196-土キャンプ適地

頭を緩く締め付けられるような痛みと焼肉を食べた翌朝の胸焼けにも似た吐き気に悩まされながら途中のレストハウスへと立ち寄る。伊豆へと向かえば温泉があるだろうと漠然と考えてはいたものの、具体的には何処へ立ち寄るかは考えていなかったからだ。ガラガラの駐車場に乗り入れ、地図上に"ゆ"の記号を探す。そんな中見付けた"まぶ湯"の文字。"安楽寺境内にある 150円"と説明があるではないか。寺を参拝、温泉へ入浴、しかも格安。ここに行かずして何処に行け、という位の私にとって打ってつけの場所ではないか。取り敢えずの行き先は決まった。昼飯も摂らなければならないのだが選択の余地はなく、丸天に決定する。
富士の樹海を渡る道を抜け、漸く御殿場に辿り着く。高度をかなり下げてきたわけだが、頭痛は一向に良くなる気配はない。そのあまりの気持ち悪さに道端にコンビニを見掛ける度に立ち寄り、水とブラックコーヒーを交互に買わずにはいられない。これはひとえに高度障害から来る頭痛と吐き気を、二日酔いか寝不足に因るものと勘違いする生理的要求に逆らえないからだ。コーヒーを飲み、水分を摂る。そして当然トイレによる。あたかも身体の中にあるこの頭痛の元となっているモノを排泄しようとしているかの如くそんな作業を繰り返す。
しかし、そんな行為も何の助けにもならず、さらに追い打ちをかけるかのように、胃の奥底に重く沈んだ揚げ物がさらに言い知れぬ気持ち悪さを増長させていった。

道はやがて海岸沿いを舐めるように伝い出す。体調さえよければ魅力的すぎる店が建ち並ぶのだが、今晩のツマミを仕入れようなどという気にすらなれずに、ただただ先を急ぐ。そんな海沿いの景色にも飽きかけた頃、山中へとルートを変更した。1.5車線ほどの細い山道はやがて道幅を広げる。最近拡幅工事が行われたばかりの綺麗な舗装、通過する車も少ない。ふっと入った名も無き道が素晴らしいワインディングだ。流石は東の聖地といったところか。小さな峠を越えると再び海が広がる。酷かった頭痛も少しだけマシになった気がした。

集落にはいると間もなく安楽寺を見付け駐車場にバイクを駐める。伊豆国八十八ヵ所の札所ということなのでタオルと朱印帳を手に庫裏へと向かった。ところが"観るだけで入浴できませんよ"と言われる。ツーリングマップルには確かに温泉の記号で載っていたのだが誤植であったとは。普通の温泉ならここに来るまでに幾らでもあったではないか。落胆する気持ちを抑えて朱印だけは戴き、近くの楠の湯を目指した。

外の券売機で券を買い番台で渡す。如何にも近所の人が立ち寄るだけといった銭湯のような温泉。風情はないがそんなことを言っている場合ではない。取り敢えず熱い湯に浸かりたかった。一刻も早くこの気持ち悪さを汗と共に洗い流してしまいたかった。
脱衣所には籠が並ぶだけで貴重品入れもない。番台に預けようかとも思ったのだが、日光での嫌な思いが蘇り、やめておく。籠の奥に財布と鍵を突っ込み、浴室へと進んだ。
病気の時はどうも考えが悪い方悪い方へと向いてしまっていけない。ここで財布を盗られたら、それ以前にバイクを盗まれたら、そんな考えばかりが頭を巡る。温泉に浸かりながらも曇りガラス越しの気配が気になる。のんびりしようと思って来たのだが到底そんな気持ちには為れない。もっとも熱すぎて長いこと入るなど無理な話なのだが。のぼせそうになり、綺麗な桜色に染まった身体を見ながらあがる。
"富士山に登ってきたのか?"脱衣所にいた老人から声をかけられる。一瞬何を言われたのか理解できなかったが、"あぁ、バイクに積んだ金剛杖か"と思いつき、"えぇ、お鉢巡りをしてきました"と答えた。
おじいさんは"ほら、風に当たっていき"と扇風機のスイッチを入れると中へと消えていった。ふと腕に目をやるとその色は一層赤みを増しまるで茹で蛸のようになっている。洗い流した汗よりも今流れ落ちる汗の量の方が遥かに多く、そしてのぼせ気味の頭はまだ鈍く疼く。しかし、少しは痛みが遠のいた気がするのは時間の所為であろうか。その生暖かい風に当たりながら今度こそ本当にのんびりと出来た。

吉祥山安楽寺
住所:静岡県伊豆市土肥709 仏閣マップ
電話:0558-98-0309
宗派:曹洞宗
開山:行基?
本尊:釈迦牟尼佛
札所:豆国八十八ヵ所第86番

まぶ湯
拝観時間:8時~17時
定休日:年中無休
拝観料:大人150円
参考URL
伊豆国八十八ヵ所霊場


馬場温泉 楠の湯
住所:静岡県伊豆市土肥795-2
電話:0558-98-1211
入浴料:400円
営業時間13:00~21:00
定休日:第2、4火曜
内湯、露天風呂
泉質:硫酸塩塩化物泉 無色透明 無臭
温度:54℃
効能:リウマチ性疾患 通風 創傷 高血圧症 動脈硬化症 婦人病

2008年3月1日土曜日

三寒四温@樽平

予算¥15,540(男1人女1人)(おまかせコース(生ウニ、天然鮃うすづくり、栄螺のピリ辛壺焼き、蓮根のえびしんじょ、中トロたたき、茹でズワイガニ、ホタテの海鮮ちまき、アサリの味噌汁)x2、熱燗三合、瓶ビールx2)

マユと樽平にいこうという話になっていたのだが、ここ最近の気温の変化により体調を崩し、延び延びになっていた。

"季節料理 樽平"
いつも通りウニから始まる。今回は人数が少ないので小振りのウニが一フネずつ。新鮮ではあるが前回より甘みも滑らかさも弱い。やはり大勢で来るべき店やなぁ、と思わせるスタート。続く鮃の刺身は甘み、旨味、歯ごたえも素晴らしい。流石に素材は良いものを使ってはる。
しかし、栄螺のピリ辛壺焼きが良くない。刻んだ栄螺をコチュジャンとチーズをのせて焼いたものなのだが、こういうものを作り置きにしてしまうのは戴けない。少ない人数で多くの人を捌かなければならないから作り置きが多い店とはいえ、これ位は作りたてで出して欲しかった。それとえびしんじょも餡の塩が立ちすぎていていたし、やはり蓮根より山芋の方が見た目も食感も良いと思うのだが、何故敢えて蓮根で造ったのかは疑問である。
この二つ以外は素材の味が活きていて美味しい。特に今回は海鮮ちまきと味噌汁がいつもより美味しく感じた。

あまり素材に手を加えず素材の持ち味を生かした料理が美味しい。もっと料理に気を遣ってくれれば良いのに、といつも思ってしまう。いっそのこと、茹でただけ、焼いただけで良いのかもしれない。満腹の帰り道、そう思った。

季節料理 樽平(たるへい)
住所:神戸市灘区友田町1丁目3-4 海鮮マップ
電話:078-854-2220
営業時間:17:00~22:00
定休日:月曜、第1火曜
季節料理 樽平@灘区