2013年7月15日月曜日

2013年7月8日月曜日

あさひ食堂

予算¥2,200(豚肩ロースとんてき¥1,100 アサヒスーパードライ大瓶¥550x2)

「お、おいしい♡」一口食べてそう思った。
「お口の中で肉汁が♡」なんてことはないが、ソースの甘みが柔らかな豚肩ロースを包み込み、しっとりとした歯応えが心地よかった。
「外はパリパリ中はジューシー♡」ってなことはまったく無いのだけれど、サクッとした豚の食感にホクホクとしたニンニクがなんとも言えず美味かった。
そして四日市名物だというのに、この「トンテキ」にたどり着くまでかなりの紆余曲折があったのだった。


御在所帰りに、改札を抜けアーケードへ向かった。 そこはよくある地方都市の駅前のように、しもた屋が建ち並ぶと云った風情ではないのだが、そこは日曜だからなのか、いまだ午前中だからかはしらんけど、ろくに酒が呑めそうな店などありそうも無かった。

そして徐々にその散策範囲を拡げていくにつれ「五十路おばさん助平ったらしい尻」とか「密室女性トイレ 洩れる喘ぎ声」なんてポスターを掲げている映画館なんかがあったり、熟女何とかとかキャンパスパブとかよく分からない看板が並ぶ一角をぶらつく羽目となっていた。


ようやく洋食屋に出くわしたと思っても、松坂牛のステーキを出したりするような微妙にB級を踏み外した店であって、当然のようにB級の代表格「トンテキ」なるものはそこに名を連ねていなかったりもした。
更にさまよい歩いても「トンテキ」を掲げる店を見かけない。あるのは中華屋やラーメン屋にカレー屋と云った按配だった。

それならば一層の事と駅裏へと向かい、全品¥500の定食(コーヒー付)を出す居酒屋で、¥500ならハズレでもいいやろとハンバーグ定食を選んだりもした。小鉢をアテにビールを頼んでもって気持ちもあったからだ。
牛肉タップリのハンバーグに千切りキャベツを添えて、小鉢には揚げなどを炊いたんと小さな冷奴がひとつ。あとは沢庵が4切れと多いが、味噌汁の具は寂しかった。食後にちょっとだけですけれどとデミタスカップで供されたコーヒーは、単なるオマケとは違うよなってくらいには美味しかったのだけれども、残念ながらビールを傾けるといった感じには成れなかったのも確かだった。


その物足りなさゆえに、餃子に麦酒とでも、あるいはちょこっとトンテキとでも、ってな感じで駅へ戻りながらビールを美味しくいただけそうな店を探し求めた。

そして呆気なくそれはあった。トンテキ専門店「ちゃん」
しかしそれは明らかにガッツリ系の店であって、ラーメンとセットであったり、山盛りな定食であったりしたのだった。腹がソコソコ満たされたボクは、ラーメンだとかご飯だとか余計なもの入らないので、ここは却下。
それならば、アサヒビールの直営店にでもとも思ったが、 料理を注文された方は生ビール半額ってのが これまたボクの癇に障り入るのを止めた。

再び線路をくぐり、夜の歓楽街方面へと向う。
するとすぐに新味覚の看板を見付けた。
新味覚があるなら、それこそそこで餃子で一杯で丁度いいではないか、と餃子にビールを頼んだ。
しゃきしゃきとした野菜に、肉のうまみ、ニンニクたっぷりのラー油を加えた、うまい餃子にうまいビールで充分満足したはずなのに、何故か満たされないところがあった。


「トンテキ」なぜそんなものにこれほど固執しているのだろう。肉などさして好きではないし、ましてや豚など年に何回も口にするのことはない。

かつて日本中を何周かバイクで廻っていた頃、各地の郷土色豊かなものを、貧乏ゆえにB級なものばかりを食い散らかして旅していた。そして四日市には来来憲のトンテキがあると聞いて、ツーリングマップルにも書き込んでいたのだった。
それでも豚肉が好きではないから、幾度と無く四日市を訪れてもそれを食す機会は一度としてなかったのだ。

そして、そのトンテキを出す店が目の前にあった。
その看板は、今日四日市を訪れて早々に、というか、前日御在所を登る前に見かけていたものだった。
そしてそれは昼呑み出来そうな店だなって漠然と思っていた店だった。

暖簾をくぐる。中にはテーブルが十ほど並んでいるであろうか。そのすべてに客が着いていた。
「相席でも良いですか」
もちろんかまわない。

ボクの前にいたお客さんはちょうど食べ終わったばかりで、すぐ会計を済ませた。

頼んだのはビールと、¥1,100って値段に躊躇したけれど「トンテキ」
「トンテキ」を食べに来たのにそれを頼まないってのは、ワケが分からない。

「15分ほどお時間を頂戴しますが」
腹ごなしに遅ければ遅いほどいい感じだ。コンパまでにはまだまだ時間がある。

すぐに二人連れの老人が相席となる。
ひとりは杖を突き、ちんばをひく。ふたりともガッツリ墨を入れている。

「あのねーちゃん、不細工やけどよう動きよるやろ」店員の一人を指差し、言う。
「ユッキーナ、お前チチ無いやろ」そんなセクハラまがいの発言にも、遠慮なく叱り付ける彼女らの接客は、大阪っぽくてなんとも心地よい。

「もうすぐ、この店出るで」
ブラウン管の中では、照英があさひ食堂の「トンテキ」を美味そうに食っていた。