2008年2月2日土曜日

三十年来の悲願@富士山

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ルート:富士宮口-雲海荘、宝永山荘-御来光山荘-山口山荘-池田館-万年雪山荘-胸突山荘-浅間大社奥宮-お鉢巡り-浅間大社奥宮-胸突山荘-万年雪山荘-池田館-山口山荘-御来光山荘-雲海荘、宝永山荘-富士宮口

単独行

思い返せば小学校二年の時、"富士山に登りたい"と言い1人富士山へと旅立った。御殿場口から取り付き、宝永山、そして七合目まで登ったが山頂まで至ることはなかった。
今となっては何故あれほどまでに富士の高嶺に魅せられたのかは思い出すことは出来ぬが、今もその気持ちは心の奥底で燻り続けたままである。

昨年は激しい雷雨に打たれての断念。
そして遂に眼前には日本を代表するその偉容が拡がっていた。遙か麓に雲を覗えるだけで、是から目指すべき頭上には眼底を突き刺すほどの晴天が拡がる。

新五合目(2400m)-5:40
テントをたたみ登山口に取り付く。山頂まで見通せる快晴、早朝の澄み切った空気、最高の登山日和である。
"おっと、焼印を貰うのを忘れていた"二、三歩踏み出して直ぐ駐車場脇の売店へと引き返す。開店準備をするなか、焼印をお願いすると"今から暖めるので少し待っていてくださいね"と言われる。
一刻でも早く登りたい。この僅かな時間でも、デートに遅れる恋人を待つほど長く感じられる。

六合目(2490m)雲海荘、宝永山荘-5:50
環境省が二億円もかけて作ったというハイテクトイレは残念ながら修理中で使うことが出来ない。
その直ぐ横を抜け呆気なく六合目に到着する。前日購入したミネラルウォーターを一口含む。まだまだ先は長い。一番心配なのは高度障害である。逸る気持ちを抑え意識してゆっくりと登らなければ、そう自分に言い聞かせる。

新七合目(2780m)御来光山荘-6:20
要所要所で休憩をし麓を眺める。太陽は更に高く登り、空の青さ、裾野に拡がる木々の緑も濃さを増していく。その美しさはまるで絵はがきのようですらある。

元祖七合目(3030m)山口山荘-6:50
どこからともなく"ドーン、ドーン"と音が響く。こんな晴天に雷かと廻りを見渡すが雷雲など見当たらない。そこで自衛隊の演習か、と気付く。
宝永山火口付近には黄色い帽子の集団が蟻の群れのようにうごめく。小学校の遠足であろうか?そんなことをボンヤリと考えながら焼印を貰った。

八合目(3250m)池田館-7:20
頂を見上げながら登っても点在する山小屋が近づくだけで何も景色が変わらない。それは麓に目を遣っても同じ事。少しくらい高度を上げたところで当然の如く、変わらぬ景色が待っている。このひたすらガレ場を登り続けるという行為が苦痛となってくる。
高度が上がり空気が澄んできた所為か矢鱈と日差しが目にしみる。念のため持ってきた安物のサングラスをかけ、ウインドブレーカーを羽織る。

九合目(3410m)万年雪山荘-7:45
登山道脇には頭を抱え倒れている人をチラホラと見掛けるようになってきた。おそらくは高度障害であろう。
一回ずつ深呼吸をするように呼吸をするが、肺へと導かれるべく期待する呼気の量は半分にも充たない。空気が薄いということはこんなにもしんどく、体力を奪うのである。
美しくはあるが単調なその景色、照りつける鋭い日差し、そして何よりも苦痛をもたらすこの薄い空気。二度とこんなつまらない山登るか!という気持ちで溢れていく。各合目毎に存在する山小屋がなければ、登っていることさえ喪失しそうなほど景色が変わらない。その存在により、少しずつでも目標へと近づいている事が実感できなければ途中で挫折していたかも知れない。
後はピークハントをしなければならない、という義務感だけである。

九合五勺(3550m)胸突山荘-8:10
遥か下より登るブルを見つけ、あのブルより先に山頂に着いてやろうと思っていたのだが、遂に追いつかれる。鳥居の下をブル道が抜けている。併せて撮ったら面白そうだと、アングルを決め待ちかまえるがバッテリー切れ。メモリーがいっぱいのロガーと並び、携帯まで使えなくなってしまった。
連泊するツーリングはいつもこの問題に悩まされる。次回までに何か対策を考えておかなければなるまい。なるべくコストのかからない方法で。

浅間大社奥宮-8:40
奥社の鳥居を潜り火口へと到着した。下から見上げたあの雲の湧き立つ頂へと至ったのに、ビックリするぐらい高揚感も達成感も訪れない。ただただ疲労感だけが押し寄せてくる。
唯一救いなのは、あれほど怖れた頭痛が現れない事である。バカ高い朱印帳と朱印を戴き、お鉢巡りを始める。もちろん二度と登る気などないから併せて久須志神社奥宮の朱印も戴くためだ。

久須志神社奥宮-9:05 
金剛杖への刻印は浅間大社と同じなので朱印だけ戴く。頭痛はまだ訪れない。そのまま剣が峰を目指した。

剣が峰-9:35
火口内には灰色に薄汚れた万年雪、足下の赤黒い岩には、どの様にして運ばれてきたのか解らぬ草たちが短い夏の合間に芽吹く。
西に目を遣ると斜面を細長く伸びた雲が物凄い速度で這い上がってくる。その様はあたかも獲物に向かい押し寄せる白蛇のようにも見える。剣が峰の穂先にて砕け散り、悶え、絡まり合い、更に大きな龍へと姿を変える。
その地より生まれし白龍達は火口へと飲み込まれていく。そして生き延びた者達だけがその先の更なる高みへと飛び立つ事を許される。やがてそれは更に大きなうねりとなり、山全体を呑み込んでゆく。麓から見上げれば静かに笠を被っているように見えるのかも知れない。しかしその真の姿は荒々しく身悶える大龍の群れなのだ。その龍たちが直ぐ頭上で生まれていく。
そして、今、私は日本で一番高い処にいる。

浅間大社奥宮-9:50
お鉢巡りをするまではこれほど単調でつまらない山はない、"富士は観る山、登る山ではない"と思っていたのだがあっさりと覆されてしまった。この様な景色を見られる場所は日本中ここを於いて他に存在しない。その為はに余りにもつまらぬ三時間もの時間を消費しなければならないのだが、その価値は確かに存在する。またこの高嶺を恋い焦がれる日々が続く事となるであろう。

九合五勺(3550m)胸突山荘-10:05
いい気になり、ゆっくりと深呼吸をしながら歩くことを忘れてしまっていた。この事が後々の辛い思いになるということなどすっかり忘れていたのだ。

九合目(3410m)万年雪山荘-10:15
屋根に石を葺き、冬仕舞いの準備を進めている。この様な光景を見かけると、その余りにもにも短い富士の夏を痛感せずにはいられない。

八合目(3250m)池田館-10:30
下りのペースが速すぎたためか頭が痛み出す。恐らくは高度障害であろう。一度出てしまっては仕方がない。高度を下げ、回復を待つしかない。

元祖七合目(3030m)山口山荘-10:50
砂走りには行かないのでスパッツを用意していないのは疎か、ローカットのトレランシューズで登っていたのが徒になった。
度々砂を出すために脱がなければならない。その行為が一々気持ちを苛立たせる。

新七合目(2780m)御来光山荘-11:10
上り、下り共に人が多く、自分のペースで歩くことが出来ない。その事がより一層苛立たせ、頭痛の原因にすらなっているのではないか、と思わずには居られなくなってくる。

六合目(2490m)雲海荘と宝永山荘-11:40 
ここまで来ればあと僅か、温泉にでも入ってノンビリすれば少しは気分も良くなるのでは?と思い始める。そんなことでこの頭痛が治るはずはない、とは判ってはいるのだが。

新五合目(2400m)-11:50
ライディングブーツに革ジャン、革パンという出で立ちへと着替える。向こうからは小学生の集団が遣って来た。宝永山火口で見かけた黄色い点々であろうか。メットをかぶり、グローブを填める。チョークを引いてセルを廻す。空気が薄いがあっさりと安定する。ゆっくりとターンし、下り口へと向かった。
"スゲー、カッコイー"と黄色い歓声が上がる。相変わらず子供には大人気だ。かつて小学校の前にバイクを駐めたとき、"イケメン、イケメーン"と盛んに叫ばれたときのことを思い出し、ちょっとにやける。もう少し年頃の女の子に人気があれば嬉しいのだが、そんな事には出会った験しがない。おそらくはこれからも。

富士山(ふじさん)
標高3,776.24m
静岡、山梨
日本百名山72
高低差1376m
場所:富士山本宮浅間大社飛地境内 map
神社仏閣:浅間大社、久須志神社
距離:登り 5.0km、下り 5.0km
所要時間:登り3時間、下り2時間


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富 士 山 富 士 山 高いぞ高いぞ 富 士 山

いやこれには入ってないんですけどね

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