2008年6月29日日曜日

信州そば 松濤庵@福原

予算¥650(天ぷらうどん¥650)

何処で飯を食おうかな、と思いながら柳筋から福原通へと派手な看板の立ち並ぶ路地を擦り抜けながら走っていった。風営法が改正されてからこの街もすっかり賑わいを失ってしまっている。客引きをされれば鬱陶しいワケだが、一言も声をかけられないというのもそれはそれで寂しかった。

"信州そば 松濤庵"
福原のど真ん中に位置する"松濤庵"。この店は天ぷらそばで有名なのだが、今日はうどんな気分ということで天ぷらうどんを頼んだ。
天ぷらは注文を受けてから揚げるので少し待たなければならない。その揚げたてそのままのエビ天がうどんに載せられる。すると出汁と合わさり、バチバチと激しい音と共に芳ばしい香りを立ち上げる。別盛りにされた刻みネギを加え、汁を啜る。カツオベースのあっさりとした出汁の甘みが広がる。それから柔らかくコシのないうどんを食べながらプリプリのエビを頬張った。
この店はこの音とこの香り、仄かに広がる出汁の旨さで成り立っている。

信州そば 松濤庵(しょうとうあん)
住所:神戸市兵庫区福原町15-5 饂飩マップ
電話078-575-2295
営業時間:11:00~18:00
定休日:日曜
cp6 mf6 re6

2008年6月27日金曜日

麺処 吾光@JR西宮

予算¥1,020(すじとじうどん¥610、穴子胡瓜¥410)

東へと向かう用事があったので、そのついでに久々に訪れたJR西ノ宮界隈。この辺りはあの特有の雰囲気を持った店が多く味わい深い。

"麺処 吾光"
一時近い時刻ともなれば店の中も半分くらいは空きが出来ていた。頼むのはもちろん"すじうどん"、これは外せない。それともう一つの名物、巻寿司だ。残念ながらかんぱちと田舎は品切れということなので穴胡を頼むことにした。
ここのうどんは大阪風の出汁で食べさせるタイプ。細くコシのないうどんにフワフワの溶き玉子とタップリのスジ、刻みネギと一切れのかまぼこが添えられる。出汁は少し甘めで丁度良い塩梅なのだが鰹節のえぐみが出てしまっているのが気になる。スジは甘くなく辛くもなく、噛み締める度によい出汁が出るのだが、根本の出汁がダメなのが残念であった。
それから巻寿司。私はここの巻寿司がうどん以上に好きだ。寿司屋やスーパーの総菜の寿司とも違う家で作った手巻き寿司のような寿司である。柔らかく巻かれた寿司を抓み、口へと運ぶとハラリと解けるような感触が良い。田舎を訪れるといつも出してくれるおばあちゃんの手作り巻寿司、といった風情の優しい気持ちを貰える味である。

麺処 吾光
住所:西宮市神明町6-12 饂飩マップ
電話:0798-65-5556
cp5 mf6 re6

2008年6月26日木曜日

大阪ラーメン@天下茶屋

稲葉家餃子は跡形もなく消え失せており、次は大阪飯店と並ぶ百円ラーメンの店"大阪ラーメン"へ向かった。

"大阪ラーメン"
鶴見橋商店街を抜け26号を下る。餃子の気分が抜けぬまま餃子を探して歩くが定休日の店を見付けただけで、ついには大阪ラーメンまで休みと生憎の一日であった。
臨時休業なのかはたまた閉店しているのか、定休日、営業時間までわからないが機会があればリベンジしてみたい。

大阪ラーメン
住所:大阪府大阪市西成区天下茶屋1-3-16 ラーメンマップ
営業時間:14:00~18:00?
定休日:日、月曜?
再再訪@大阪ラーメン

2008年6月23日月曜日

とれた亭@須崎

予算¥850(土佐丼¥850)

やはり土佐を訪れたからには鰹を食べないわけにはいかない。鰹は余り好きではないのだがこれは土佐を訪れた人に課せられた義務である。

"とれた亭"
本当なら鰹のタタキ膳を食べたかったトコロなのだが、土佐丼の倍近い金額を払う余裕など無かった。
熱々の御飯の上に甘辛いタレを絡めた鰹の刺身が並ぶ。それを覆い隠す細かく刻まれた葱と大葉。山葵とスライスされた大蒜を混ぜ合わせて掻き込む。やはり土佐の鰹は他の場所で食べるモノとは別物だ。噛み締めるとしっかりとした食感と共に鰹の風味が広がる。しかし、そこには決してあの臭みなどない。

"なんだ、タタキじゃないのか"
同じく土佐丼を頼んでいた隣のおっさんがそう呟いた。当然だ。メニューにそう書いてあった。鰹の刺身だと。それがいきなり鰹のタタキになって出てくることなどあろうハズがない。ただ、同じくこれがタタキであったなら、そう思う気持ちが何処か在ったのは確かだった。

一階の売店を見て回る。今晩の酒とアテを探して。その一角ではタタキの実演販売をしていた。藁を燃やすことによって一気に燃え上がる激しい炎が、鰹の皮と脂を焼き上げ香ばしい香りを放つ。前に並べられた試食を一つ摘む。あぁ、美味い。火で炙る、ただそれだけの作業なのに、刺身とは同じ鰹であるとは思えないほど劇的に美味くなる。この調理法を発明した人は天才だ。

とれた亭(道の駅 かわうその里すさき)
住所:高知県須崎市下分甲263-3 海鮮マップ
電話:0889-40-0004 
営業時間:11:00~20:30(LO)
定休日:無休
公式サイト
cp6 mf6 re6

かつお解体君

2008年6月21日土曜日

本店とりひげ@王子公園

予算¥2,550(生小¥290x2、一番搾りスタウト¥290x2、盛り合わせ(かわ、み、ねぎみ各2本、きも、つくね)¥680、とりひげ本店サラダ¥580)

一寸呑みに出かける前の腹拵え。幾つかの当てが外れて久しぶりの"とりひげ"となった。

"本店とりひげ"
扉の硝子越しに見慣れた人影を見付けた。
"こんばんわ"と声を掛け、傍に腰を下ろす。マスダせんせいと顔を合わせるのも久しぶりだった。取り敢えずは生ビールと盛り合わせを注文した。
盛り合わせだけでは足りないかな?という事で、ちょっと心惹かれた"とりひげ本店サラダ"とはどんなモノかマコッちゃんに尋ねてみた。
"野菜サラダにポテトサラダが載っていて、ササミが添えられていてドレッシングが・・・" 思いのほか普通っぽかったので興味を失ってしまっていた。 "・・・それでボリューム満点ですよ"説明は続く。其処までしっかりと説明を受けてしまっては頼まないわけにはいかない。量があるという事なので今日は鳥丼はナシだ、残念ながら。
確かにボリュームのあるサラダをツマミながら、フットサルの事、釣りの事、酒の事、取り留めのない話しとグラスを重ねていく。

マスダせんせいが勘定を済ませていると"おぅ、ひさしぶりやね"とクミコさんから声が掛かる。先生は"来たから帰るわけ違うで"と言い訳がましく言うと慌ただしく去っていった。先程まで先生の居た席に今度はクミコさんが座る。私もそろそろ次の店に行こうかと思っていたのだが、ここで去ってしまっては"来たから帰る"みたいで具合が悪い。更にビールを追加し、再び、フットサルの事、釣りの事、酒の事など取り留めのない話しとグラスを重ねていった。

そういえばいつもの事だが、またビールのタダ券を使うのを忘れていた。もう、かれこれ三年ほど財布に入ったままである。

住所:神戸市灘区倉石通5-1-11-101 焼鳥マップ
電話:078-801-7613
営業時間:17:30~26:00(LO)
定休日:年中無休
cp7 mf6 re6
支店とりひげ@王子公園

2008年6月20日金曜日

リカーショップ たかしま@新在家

予算¥770(水餃子¥380、キリン大瓶¥390)

イモウトさんがアメリカに帰っているすきにハネを伸ばしに出かけた。とは言っても晩飯の食材を仕入れに出かけたついでに、フラッと寄っただけなのだが。

"リカーショップ たかしま"
ガラス戸を開けて中へはいると巨大な冷蔵庫に迎えられた。ビール瓶を片手に中へと進む。
"お持ち帰りですか?"と聞かれるが
"呑んでいきます"と栓を抜いて貰った。

手前のカウンターでは一人客が黙ってグラスを傾け、奥のテーブルでは団体客で賑わっている。視線が通らないように微妙にオフセットされた造りだ。居酒屋利用、立ち呑み利用どちらにも使えそうである。その所為か意外としっかりとしたアテも幾つか見受けられる。その中から水餃子を選んだ。
顆粒の中華スープを溶いただけの汁に、これまたミンミンのものと思わしき餃子が浮かんでいる。当然、味はそれなり、ボリュームは意外とある、そんな感じだ。まぁ、ちょっと引っ掛けたかったダケだからこれで十分。

リカーショップ たかしま
住所:神戸市灘区友田町2-4-11 立ち呑みマップ
電話:078-851-6715
cp6 mf4 re5

2008年6月19日木曜日

海鮮鮨処 増田屋@垂水

予算¥0(おごり)(ランチにぎり¥800(日祝除く11:00~14:30)(タコ、イカ、マグロ、鰻、玉子、鯛x2、シメサバ、ハマチ、サーモン、赤だし))

アイカタさんの付き添いでポルトバザールへ。マリンピア神戸には美味い店がないので駅前で食事を摂ることにした。

"海鮮鮨処 増田屋"
言わずと知れた有名店。流石に平日の昼前ともなれば行列は出来てはいない。客の入りもまだ半分くらいといったところであった。

""うに"が食べたい、でも"トロ"はイヤ、それと赤だしも欲しい" 相変わらず注文が五月蠅い。店員さんと相談しながら注文を決めていく。結局は上にぎり1人前(1,200円)と赤だし(180円)に決まった。
私は一番お得感のある"ランチにぎり"。以前より値上げしたとはいえ、それでも十分安い。新鮮で大振りなネタが並ぶ。回転寿司と同等の値段でちゃんとしたにぎりが食べられるのが嬉しい。

"昼から寿司なんて贅沢だね、あれも美味しそう、アワビも安いね" 壁に所狭しと貼られたメニューを見ながらご機嫌な様がよい。アイカタさんはこの店はお気に召したらしく、その点ではひと安心であった。機嫌が悪いと"ヘンな物食べさせられた"といつまでも言われ続けてしまう。それだけはゴメンだ。
真っ先にウニを頬張り、幸せそうに笑みを浮かべる。食べ物は雰囲気によって随分味が変わるからなぁ。満足げな顔を見ていると、こちらの寿司まで何倍も美味しく感じてしまう。

"この前、チラシ作ってもらったから奢るね、随分と安上がりで悪いけど"と伝票を持っていく。そうとわかっていたら特上にしておくんだった。

海鮮鮨処 増田屋 垂水駅前店
住所:神戸市垂水区宮本町4-16 寿司マップ
電話:078-705-0331
営業時間:11:00~21:00
定休日:火曜(祝祭日は営業)
cp7 mf7 re7
公式サイト

2008年6月17日火曜日

中村屋

集めてみました

中村屋 結婚式スピーチ


中村屋 弔辞


中村屋 ライブ@横浜ブリッツ


イヤね、披露宴の話しですわ
はじめはこのノリで行こうかとも思ったわけですけれど、それはあまりにもアレですし、仕込みも大変なワケですし、止めたわけですわ
でも、あの為体
この方が本領発揮できて良かったかも知れませんね
あんなノリとは思っていなかったワケで、いざ蓋を開けてみればこんなノリもOKだったのかも?、と今は思っています

ではでは

2008年6月16日月曜日

元祖鉄板焼 五味鳥@今治

予算¥2,200(かわ¥280、五味焼(四串)¥260、せんざんき¥380、れんこん¥420、手羽先¥300、烏龍茶¥280x2)

今治市は人口当たりの焼鳥屋数が日本一という鶏好きとしてはこれまた外せない町である。そしてこの町では鉄板の上でプレスして焼き上げるという一風変わった焼鳥を出す。このスタイルは焼きに加え、蒸す、揚げるの要素が加わり、早くて美味いという事だ。

"元祖鉄板焼 五味鳥"
扉を開けると、狭い間口から奥へと細長く続くウナギの寝床といった造りの空間が拡がる。長年の脂と煙で燻され続けた薄汚れた壁は如何にも美味いモノを食べさせてくれそうな雰囲気を醸し出していた。
メニューを見てちょっと違和感を覚えた。鉄板焼鳥というのは小さく刻んだ鳥をそのまま焼くのだとばかり思っていたのだが、そのような焼き方をするのは"かわ"だけで他は串に刺して焼く"串焼"というモノだった。取り敢えずはその"かわ"と店名を冠している"五味焼"、そしてこれも外せない"せんざんき"を頼んだ。
先ずは"かわ"と"五味焼"がキャベツを添えて運ばれる。上からは同じとろみのある茶色いタレがかけられていた。"かわ"は"かわ"と名が付いてはいるが見た目は"ネック"である。一つ摘んで食べてみる。食感、味共に"ネック"である。どこからどこまでも"ネック"である。"かわ"というのは部位を差すのではなく、ただ単に料理名なだけなのであろうか?そんな不思議な気持ちにさせられる。かわよりネックが好きなのでその方が嬉しいのだが。
次に"五味焼"を頂く。名前からはどのようなモノか分からなかったが、ネギと牛や豚などの内臓肉を串に刺して焼き上げたモノであった。"五味"というのは五つの味ではなく、大阪でいう"ホルモン"、"捨てるもん"と同じ意味合いで"ゴミ"を意味しているのであろうか?中々面白い名付け方である。
どちらも安くて量が多く美味いのだが、この上からかかっているタレだけはどうも苦手であった。照り焼きソースよりも更に甘く、みたらしの様である。このタレも長年受け継がれた秘伝らしいが好みに合わない。
これらを食べ終える頃に丁度"せんざんき"が出てくる。常連さん以外には無愛想な感じなのだが、客の食べる具合に併せて出すタイミングを合わせているような節がある。その辺の気配りが余所者にも居心地の悪さを感じさせない点かも知れない。
"せんざんき"まで甘ったるい味であったなら店を出ようと思っていたのだが、これはかなり美味かった。しっかりと醤油や味醂で下味がされた旨味の拡がる肉が、カリカリの香ばしい衣に包まれている。ビールを飲めない事が非常に残念だ。仕方なしに代用品として烏龍茶を追加する。それと共にお薦めとなっている"れんこん"、と"手羽先"も注文した。"れんこん"は隣の人のを見てタレがかかっていない事は確認済みだし、"手羽先"の脂っこさにはあのタレは合わないだろうと予想しての事だ。
"手羽先は時間かかりますよ"と言われたが先を急ぐ旅でもない、ノンビリと待つ事にした。
"れんこん"とはレンコンのミンチ詰めで、あの小さな穴に鶏ミンチを詰めて厚さ1cmくらいにスライスし焼かれた物である。このレンコンのシャキシャキした食感とモチモチとした風味豊かなミンチが合わさると中々楽しい味だ。ポン酢のサッパリとした風味も良い。
そうこうしているうちに手羽先が焼き上がる。串で衝いて穴を空け、上から強くプレスする。そうやって焼き上げられた手羽は穴から脂が抜け、揚げ焼きしたような香ばしさが味わえる。これもビールが欲しくなる味であった。

これだけの量はちょっと食べすぎであった。ビールに"せんざんき"と"れんこん"か"かわ"くらいで丁度良い量かも知れない。
やすい、はやい、うまい、を地でいく鉄板焼鳥ではあるがあのタレだけは疑問である。塩にレモン汁のほうが遥かに美味いと思うのだが。
次回は"世渡"や"鳥林"で味の違いを試してみたい。もちろんこの地で一泊してビールとともに、である。

元祖鉄板焼 五味鳥(ごみどり)
住所:愛媛県今治市旭町1-5-20 焼鳥マップ
電話:0898-32-3753
営業時間:17:00~23:00
定休日:日曜
cp7 mf7 re7

2008年6月15日日曜日

Giacosa Fratelli BARBARESCO 2003

DOCG 750ml 13.5%vol ITALIA
品種:ネッビオーロ(Nebbiolo)
オヤジさんのイタリア土産

僅かではあるがアルコール臭が鼻を衝く。香りの立ちも悪いのでデキャンタに移した。
思ったよりタンニンは弱くミディアム位か、色合いも薄い赤である。
口に含むとウッディー系と花を思わせる華やかな香りが広がり、舌の先には甘みが残る。
アロマは控えめだが流石にバランスはよい。
ただ、物足りなさを感じるのも確かであった。やはり華やかなイタリアワインよりも重厚なフランスワインの方が好みである。

Giacosa Fratelli BARBARESCO 2003(フラッテリ・ジャコーザ バルバレスコ)
公式サイト

2008年6月13日金曜日

かつ丼 吉兵衛@センタープラザ

予算¥600(カツ丼¥600)

久しぶりに三宮へと出かけたので吉兵衛に寄ってみた。

"かつ丼 吉兵衛"
客の列は五、六人ほど、その最後に並びカウンターが空くのを待った。いつもはこの行列がイヤで市場で刺身定食など食べるのだが、今回は何となく並んでみることにした。
持ち帰りの客が次々と受け取り、帰っていく。そうか、列ぶのが嫌なら持ち帰りという手があったのか、とか考えていると席が空いた。

直ぐに揚げたて、作りたてのかつ丼が目の前に並ぶ。サクサクのカツにトロトロの玉子、そして刻みネギが散らされている。脂身が少なくあっさりとした豚肉。臭味もなく、さほど厚みもない割に旨味もある。和豚もちぶたというそうだ。玉子は少なめ、50円追加して2個にしたほうがバランスが良さそうだった。
味付けはカツオの風味を感じるあっさりとした出汁。タマネギの甘みもないわけだし、ここはもう少し甘めの割り下が良いのでは?と思わされた。

とは言っても600円で食べられるかつ丼としてはここに勝る店は無いだろう。
しかし、たかだが十分にも満たない時間だとしても並んでまでの価値はないと思うのだが。
結局のところ、オレはたけふくのかつ丼が一番好きなんだろう。

かつ丼 吉兵衛(よしべい)
住所:神戸市中央区三宮町2-11-B1-A-22 センタープラザ西館地下1階 かつ丼マップ
電話:078-392-4559
営業時間:10:30~18:00頃まで(売り切れ次第閉店)
定休日:日、祝、水曜(但し祝日のある週は水曜日営業)
cp6 mf5 re6
公式サイト

2008年6月12日木曜日

宮交レストラン 青島@青島

予算¥550(ひや汁定食¥550)

旅も三日目ともなると、多少の疲労を感じるようになってきていた。加えてこの暑さである。朝から腹に入れたものといえば、たった一杯の珈琲だけだというのに食欲は湧いてきやしなかった。

"宮交レストラン 青島"
青島神社を参拝した後、何か今晩のツマミにでも良いものは無いかと宮交レストランへと立ち寄った。そんななか見付けた食堂コーナー。商品見本にひや汁定食550円というのを見付けてしまった。幾ら食欲がないとはいえ、ひや汁くらいならサラサラっと食べられそうだ、ということで立ち寄ってみた。
焼いたアジをほぐし焼き味噌をのばした汁に豆腐、きゅうり、青紫蘇などの薬味を入れて熱々のご飯にかけて食べる、これがまた疲れた胃袋に染み渡る。言うなればネコマンマといったモノに過ぎないわけだがこの素朴な味が嬉しい。みやざき地鶏や宮崎牛など脂が載りに載ったものはちょっとゴメンだがこれはいい。
外に出ると、バイクのすぐ前におばあさんが店を出していて冷凍パイナップルを買わざるを得なかった事まで良い思い出である。

※現在"青島屋"と店名変更しています
宮交レストラン 青島(青島屋)
住所:宮崎県宮崎市青島2-12-11 和食マップ
電話:0985-65-1121
営業時間:9:00~17:00
定休日:年中無休
青島屋サイト
cp6 mf5 re5

2008年6月10日火曜日

寿し 仕出し 味秀@今治

予算¥1,200(おまかせにぎり(サヨリ、フグ、イカ、タコ、ハマチ、ホッキ貝、鯛、サーモン)¥800、地魚磯辺揚¥400))

プレファブ然とした作業場のような佇まいの寿司屋があるという。しかも安く新鮮なネタが食べられるとあっては行くしかない。

"寿し 仕出し 味秀"
"寿し 仕出し 味秀"の看板が無くては絶対にそこが寿司屋であることなど分かりようもない海産物作業場のような建物のガラス戸を開ける。中にはテーブルが並び、奥には座敷が拡がっていた。外観から想像するほど雑然としたモノではなく、ちゃんと食事を摂らせるところといった造りとなっている。作業場の一角で食事も出しますといった、香川のうどん屋や能勢の山奥にあった三洋のようなところを想像していただけに、ちょっと肩透かし喰らったような形となった。

壁にはチラシの裏にでも書かれたようなお品書きが無造作に貼られている。殆どのネタは二貫200円、ウニやイクラなど上等なモノは400円、そして最も高価なのが大トロで800円という値段構成だ。安いことは安いが思っていたほどではないなぁ、と思いながらも紙に注文を書き込んでいく。先ずはおまかせを頼んでウニか大トロでも追加しようと考えながら。
寿司を待つ間、地魚磯辺揚を摘む。ベラであろうか?小骨が気になるが400円でこの量と味なら文句はない。そしていよいよ寿司が運ばれてきた。写真では分からないと思うが、一つ一つが一般的な寿司屋の二貫分以上の大きさだ。ここまで大きいと寿司というより寧ろおにぎりといった感じである。その上ワサビは皿の縁に別に載せられており、これをネタの上に塗り食べるというのは美しくない。当然これだけで満腹となり追加注文をすることはなかった。ネタは悪くはないだけに、高級なネタを試してみることが出来なかったのが残念である。

一つ一つのネタを二貫ずつに別け計十六貫にし、サビも付けて握っておく。そうすれば又来ようと思える寿司屋になるのだが。
次に今治を訪れたときには、対極となるであろう十円寿しを訪れてみたい。

寿し 仕出し 味秀
住所:愛媛県今治市桜井甲1776-2 寿司マップ
電話:0898-48-2721 
営業時間:11:30~20:30
定休日:年中無休
cp7 mf5 re6

2008年6月9日月曜日

地鶏焼 しゃもの駅@宇佐

予算¥1,000(しゃも円石焼¥1,000)

せっかく九州まで出かけて来たというのにまだ鶏を食べていなかった。宮崎ほど有名ではないのだが、ここ大分の中津は鶏肉消費量日本一の町である。その中津へと向かう途中"地鶏焼"の看板を見付け立ち寄ってみた。

"地鶏焼 しゃもの駅"
ファミレス風の小綺麗な造り。三時過ぎという中途半端な時間故か、客席は疎らだった。
メニューを見るまではカラアゲを頼もうと思っていたのだが"しゃも円石焼"というのに惹かれそれに変更する。

熱く熱せられた石板で薄く紅を差す鳥刺を焼き、塩ダレや梅醤油でいただく。何でも安心院の自然の中で育てた"豊のしゃも"という品種らしい。宮崎地鶏ほどのジューシーさは無いものの適度な歯ごたえとあっさり目の旨味が広がる。
鶏飯がおかわり自由ということでさほど腹が減っていたわけでもないのに二杯もお代わりしてしまう。これはほんのりと鶏の旨味を吸い込んだ炊き込みご飯で飽きる事がなかった。

十分に腹も気持ちも満足し、これからの予定を立てるため"旅なび"を広げる。宇佐の辺りを調べているとそこに"地鶏焼 しゃもの駅"が載っていることを見付る。だからレジの処に大量に並んでいたのか、と納得した。

会計の時、""旅なび"に載っていましたね"と話しかけると、"どうぞ、差し上げますので持って帰ってください"と言われる。"いえ、既に持っていますから、ありがとうございます"と断る。
どうして九州の人は矢鱈と人に物をあげたがるのであろうか?恐縮してしまうことが度々ある。

※現在"花みちの駅"と店名変更し、焼肉屋になったようです
地鶏焼 しゃもの駅
住所:大分県宇佐市中敷田553 焼鳥マップ
電話:0978-33-5358
営業時間:11:00~21:00
定休日:水曜
cp6 mf6 re6

2008年6月8日日曜日

CAVICCHIOLI LAMBRUSCO ROSSO AMABILE

750ml 8%vol
品種:グラスパロッサ、フォルターナ、マルボジェンテーレ
友人宅へ花束と共に持っていこうと思っていたのだが、veuve clicquotに換えたので家呑み用へ

安い割に高級感のあるラベルが好印象。血の様な真紅に白い泡の対比が中々そそられる。
初めはしっかりとしたタンニンを感じ、結構良いかも?と思うのだが飲み進めるにつれ、ベリーっぽい甘ったるさと果実香が鼻につくようになる。
炭酸の立ちもシャンパンのような軽やかさは無くビールの様な泡立ち。
チューハイ感覚で飲めるので普段使いに良いかも?ワインが苦手な人にもオススメ。

CAVICCHIOLI LAMBRUSCO ROSSO AMABILE(カビッキオーリ ランブルスコ ロッソ アマービレ)

2008年6月7日土曜日

ピザハウス F@阪急六甲

予算¥1,620(イタリアンサラダ¥630、ハンバーグディナー¥990(ハンバーグ、ライス、発泡酒))

マユがピザを食べたい、と言いだした。もうとっぷり夜も更けた時刻だというのに。こんな時間にピザを食わせる店はそう多くはなかった。

"ピザハウス F"
店内は神大生のグループが居り、テーブルを挟んで会話するのも難しいほど騒がしい。ゆっくりと食事と酒を楽しみたかったのだがどうもそういうワケにはいきそうもなかった。

先ずはハンバーグディナーが運ばれてきた。見た目、味共にそれなりではあるのだが、ビールが発泡酒であることにガッカリさせられる。そして最悪なのがイタリアンサラダであった。刻んだ野菜の上に冷凍のシーフードミックスを載せただけという代物。一番美味しかったものはピザディナーに付いてきたデザートピザであろう。
ハンバーグを食べるのならばびっくりドンキーにでも行った方が数倍満足感を得られたというものだ。

ピザハウス F
住所:神戸市灘区宮山町2-4-4 五光マンション1F 洋食マップ
電話:078-821-3994
営業時間:12:00~14:30、17:30~25:00
定休日:無休
cp4 mf3 re4

2008年6月6日金曜日

薩摩富士

ルート:かいもん山麓ふれあい公園-二合目登山口-山頂-二合目登山口-かいもん山麓ふれあい公園

単独行

かいもん山麓ふれあい公園にてキャンプ。
"山頂までどれくらい時間がかかりますか?"管理棟で使用料を支払うついでに尋ねてみた。答えは"三時間半くらい"と返ってきた。
たかだか千メートル足らずの山に三時間以上もかかるのだろうか?と疑問に思いはしたが、酒を喰らい早めの就寝とした。
翌朝、夜明けと共にテントを撤収し、開聞岳登山へと向かった。パターゴルフ場を横切り、二合目登山口に到着すると"上り150分、下り90分"と看板に書かれている。
それくらいなら妥当な線だ。まさか革ジャン、革パン、ライディングブーツという出で立ちで登ると思われたわけではあるまい。

6:25 二合目登山口
先ずは照葉樹の茂る森の中を歩く。早朝といえども流石は南国鹿児島らしく蒸し暑い。
登山道へと張り出した羊歯は朝露に濡れ、そこを通り抜けようとする身体に五月蠅くまとわりついてくる。そのうえ、厚く積もった礫は足を浚い、疲労と不快感ばかりが積み重なっていった。
眺望も景観の変化もなく単調な道をただひたすら登り続けていく。五合目付近で一度木々の切れ間から、指宿方面へと展望が開く。海に張り出した独立峰という変わったロケーション。眼下には鹿児島湾が広がる。しかし、登り始めると再び覆い尽くされ、七合目付近まで眺めは得られなくなった。
そして再びの眺望、長崎鼻へと続く優美な弓状の浜辺が続く。山頂からの眺めはさぞかし素晴らしいものだろう。晴れていれば、の話ではあるが。

この辺りから足下は確かな岩塊となり、足取りも軽くなる。ここから先が仁和元年の噴火で隆起したという部分だ。そして間もなく"仙人洞"が現れた。単調な登山道にあるたった一つのイベントといったところか。傍に設置された看板に依ると
"孝徳天皇の頃、開聞岳北麓の「岩屋」(開聞中学校の南150m)にある観音堂は、山伏たちの修行所として諸国からの出入りが多く、開聞宮の社人たちも山伏となり、ここから修行に出かけていたようです。
この洞窟は、開聞岳が噴火したときに溶岩がせりあがってできたもので、これら山伏たちの修行の場として使われ、「仙人洞」という名前が付けられたといわれます。
今は「千人洞」ともいわれ、開聞岳の登山の途中でここまで使ってきた杖をこの洞窟に投げ入れて、杖に感謝し、これからの登山の安全を祈願する人が多くいます。"
ということだ。その儀式に則り、傍に落ちていた小枝を拾い、投げ込んだ。

前方にストックを突きながら登る老夫婦を見掛けた。お二人はこちらが追いついたのに気付くと道の端に立ち止まり先を譲る。"こんにちは"と挨拶を交わし、追い抜かせてもらう。
九合目辺りの岩壁に掛かる梯子を越え、再び現れた木立を抜けると呆気く山頂へと到達する。

8:10 山頂
山頂は雲に覆われ、期待していた眺望は全くない。暫く晴れ間を待つが、吹き付ける湿り気を帯びた風は容赦なく身体を冷やしていく。身震い一つ残し、山頂を後にした。
梯子を下りそこから幾分か進むと、先ほどの老夫婦と出会った。今度はこちらから道を譲る。"早いですねぇ、もう登ってきたのですか"と声をかけられ、"はい、でも残念ながら眺望はないですよ"と返した。

再び単調な道を下っていく。緩い下りと気を抜いていると、ガレ場で足を滑らし手を着く。そこで下山でこそ杖が必要だというのに仙人洞で投げ入れてしまっては駄目なのではないか?と気付く。もっとも最初から杖など持って登ってなどいないのだが。

9:30 二合目登山口
登山口を抜け、左へと続く道へと折れる。こっちからもふれあい公園へ行けるだろうと予想してのルート取りだ。案の定、スキー場を抜けキャンプ地へと辿り着く。始めからこちらを通っていればゴルフ場で藪漕ぎなどしないで済んでいた。
後は枚聞神社へと安全祈願のお礼参りを残すだけだった。

開聞岳
標高922m
鹿児島
日本百名山
高低差820m
所在地:鹿児島県指宿市 山岳マップ
神社仏閣:枚聞神社
距離:上り 3.5km、下り 3.5km
所要時間:登り1:45、下り1:20

枚聞神社(ひらききじんじゃ)
鎮座地:鹿児島県指宿市開聞十町 神社マップ
祭神:大日孁貴命(おおひるめむち)
旧社格:国幣小社
神階:従四位上
神紋:四割菊
薩摩国一宮

2008年6月5日木曜日

味処 あらし@鳴門

予算¥1,300(特選刺身定食(鯛、ハマチ、平目)¥1,300)

行きしには定休日で食べ損ねてしまっていた"あらし"に立ち寄った。
ここ"あらし"はあの有名な"びんび屋"の息子さんが独立してやってはるお店である。雰囲気も含めて味わうとなれば"びんび屋"の方が良いのかも知れないが、こちらはアクセスの良さや、時間を外せば並ばずに入れるというのも魅力的だ。

"味処 あらし"
まだ新しく小綺麗な店内には静かにジャズが流れてた。その巨大な生け簀や、明るすぎる照明など魚を美味しく食べさせる店といった情緒としてはどうかな?とも思わせる造りではあるが、出てくるものは絶品である。
しっかりと厚く切られた刺身は適度な歯応えがあり、噛み締める度に魚の旨味拡がる。ちょっと他では味わえないほどの美味さは感動的ですらある。しかし、"びんび屋"と同じく名物である鳴門産ワカメの味噌汁は辛すぎであった。ワカメは歯応え、風味共に良く美味しいのだが何故こんなに濃い味付けなのだろうか?徳島ラーメンも含めて濃くするのが徳島風なのであろうか?
とはいえ、この刺身を味わうためなら鳴門海峡大橋を渡るだけの価値は十分にあるのかも知れない。

味処 あらし
住所:徳島県鳴門市撫養町大桑島北の浜51-1 海鮮マップ
電話:088-686-0005
営業時間:11:00~21:00
定休日:水曜(祝日の場合営業)
cp8 mf8 re8

2008年6月2日月曜日

jazz & cafe JamJam@元町

予算¥500(ブレンドコーヒー¥500)

再度山を巡っているとメールの着信音が鳴った。こんな山間で珍しいな、と確認する。ユキからだった。
"今日は山かな?今からジャムに行こうかと"
正解だ。もっとも山か寺かツーリングと言っておけば大体は当たる訳だが。

"jazz & cafe JamJam"
先に入っているという彼女を追いかけ、階段を下りる。扉を開けると少しカビ臭いひんやりと湿った空気が流れ出してきた。薄暗い店内を見渡すと入り口横のいつものソファーにその姿を見つけた。その横に身を沈め、ブレンドを頼んだ。

"はい、お土産。ヨリちゃんと金沢に行ってきた"
いつも通りのぶっきらぼうな言い方。だが、別れて未だ半年という微妙な緊張感からか、その声は揺らぎ以前ほど棘はない。更にもう一つ包みを出す。

"これもあげる、高かったんだからね"
相も変わらず一言余計だ。ありがとうと苦笑いしつつ、カバンにしまった。
レコードは何処かで耳にした事のあるスウィングからフュージョンぽい曲調のものへと変わっていた。

彼女はジャズが好きな訳ではなく、"ジャズを聴いている私が好き"と言って憚らない。私とて真摯に向き合うわけではなく、ラジオから流れる曲をただ聞き流すように楽しんでいるに過ぎない。ただ、流行歌よりもジャズの方が心地よいというだけだ。
レコードの片面を四枚分楽しみ、店を後にする。

"前に連れて行ってくれたあの店教えてよ"と言われ、口頭で説明する。
"わからへん、連れてって、覚えるから"
やれやれ、どうせまた覚える気など無いのだろう。また行きたくなったときは呼び出されるに決まっている。いつだってそうだった。

jazz & cafe JamJam
住所:神戸市中央区元町1-7-2ニューもとビル地下1F 喫茶マップ
電話:078-331-0876
営業時間:12:00~23:00
定休日:不定休
公式サイト
cp7 mf7 re7

2008年6月1日日曜日

かみなり

リスペクト自生山那谷寺霊と共に霊峰月山三度目の立ちゴケワインディングロード続・ワインディングロード続続・ワインディングロード交通規制@富士山スカイライン三十年来の悲願@富士山温泉?@まぶ湯ぼくの帽子

10泊11日
十一日目415km total 2,891km

土キャンプ適地-r196-r75-R52-R1-R152-R257-田峯観音-R420-r365-r33-r484-シルクロード-R153-r39-R248-R1-R23-R258-R421-石榑峠-R421-R8-竜王かがみの里-R8-R1-r35-r36-r7-r15-来来亭-r15-R170-R171-R2

"今日は保ちそうですよ"そんなマスターの台詞をボーっと聞いていた。
"モツ?ナニが?"俺には何を言っているのか全く理解できていなかった。
"明日は雨になるようですよ"マスターは繰り返す。
" 雨?"聞き返す。
雨が降るなんて思いも依らなかった。今日はそんな雲ひとつ無い良い天気であった。

山間を縫うワインディング、空は高く抜け、吹き抜ける風は山特有の匂いと静けさを運んでくる。そこには見通しの良い高速コーナーの連続しか存在しなかった。気持ちが昂ぶる。ついついオーバーペースになりラインがはらんだ。
"おっと、危ない"、フロントを軽く当て逆ハンを切る。更に深く寝かせ、よりタイトなラインへと強引に換えていった。ステップが軽くはじかれる。右足に路面の感触が伝わった。
(RC)30なら突っ込んでいるところだった。FSの扱い安さは異常、適当に走っていても何とかなってしまう。初めこそ、そのオーバーステア気味に切れ込むハンドリングが嫌いだった。サスもプアで路面を追従しない。スロットルを戻すだけでリアがロックする。雑にスロットルを開けるとフロントが暴れる。そして全然効かないブレーキ。なんて乗りにくいバイクなんだろう、最初はそう思っていた。
ステダンを入れ、キャリパーとサススプリングを交換しないと怖いな、とその時は考えていた。それから数万キロ一緒に旅を続けている。最早これも扱いも慣れたものだ。センター乗りのリーンウィズ。早めのブレーキングからスパッと寝かせてアクセルオン。その倒し込みはツインらしく軽く速い。後ろから見ると転けよった、と思うそうだ。バンクが決まれば後は暴れるフロントを押さえ込む(段減りしているだけだが)。突っ込みよりも立ち上がりの鋭さを楽しむ。大型のクセに上りよりも下りの方が速いという変わった乗り味。上りでは加速と共にフロント加重が抜けて曲がらないからだ。今ではそんなクセ、全てが楽しめるようになっている。
レースではないからこれで十分。結局はもっと効きの良いブレーキパッドに交換しただけに留まっている。

三重県に差し掛かる頃には、頭上に懸かる黒々とした雨雲が鈴鹿山脈まで大きくその手を広げようとしていた。何処からか雷鳴が轟く。雨粒がポツリポツリとシールドに跡を刻み込む。多度神社に向かおうと思っていたのだが残念ながら早めに峠を越えた方が良さそうだった。

峠へと向かう道、何台かの車をパスしながら雨雲に追いつかれないように先を急いだ。そしていよいよ現れる傷だらけの二つの巨大なコンクリート塊。話には聞いた事のある"2t車以上通行止"を強制的に施行する重圧物。その隙間はわずか2mしかない。この間を通るからにはこの先でどの様な目に遭うか覚悟は出来ているのであろうな、そんな事を無言で伝える威圧感がある。
始めはやや広いコンクリート舗装が続く。営業用の白いバン、ガンメタのセダンを追い越し、いよいよ極狭路へと差し掛かった。完全一車線、否、0.8車線程であろうか。こんな処で車と出会ってしまっては最悪だ。バイクであっても擦れ違う事など出来ない。スピード落としての数分間、間もなく同じくコンクリート塊二つのゴールを抜けた。抜けると同時に車と擦れ違う。正に今上ってきたばかりの道を下っていった。
どっと疲れと安堵感が押し寄せる。コンクリート舗装、ブラインドカーブ、極狭路、僅か数百メートルの距離が数百キロ以上の疲労をもたらしていた。
峠を越え、やっと空へと視線を送る余裕が出来る。見上げると、頭上には薄く雲が拡がるだけ。何とか雨雲も撒いたようだった。とはいえあまりノンビリとしている余裕もない。急いで山を下っていく。

滋賀へ下れば大丈夫だろうという考えは甘かった。峠を下りへ始めて直ぐに又雨の洗礼を受ける。雨脚が激しくなる度に木立の茂みを探し立ち止まる。そんな調子で何度かの雨宿りを繰り返す。永源寺に降りてくる頃には漸く空も明るさを取り戻してきていた。夕焼けに雲はほんのりと色付き始め、夕立ももうそろそろ収まったであろうと再び家路を急ぐ。遙か北に目を遣ると未だに黒々とした雷雲が拡がり、どこからともなく雷鳴が響いてきた。しかし、あれほど激しく降った雨もここの路面を濡らしてはいない。かなり局地的なスコールが所々で繰り返されてたのだろうか。そして雨雲に偶々出会う度に通り過ぎるのをただじっと待つ。そんな事に時は無為に消費されていく。進む時間よりも留まる事に費やす時間の方が遙かに長かった。
雨上がりの中、車の流れに乗り、そのまま西へと向かう。まぁ、今からでも太郎坊宮くらいなら寄っていけるかな、と甘い考えが浮かんでいた。やがて、そんな思いを打ち消すように黒々とざわめき立つ路面が現れる。そこから先の景色がボンヤリと霞む。スコールのカーテンだった。思わずUターンをしようか、という衝動に駆られるが、反対車線に途切れはない。そしてそのままその中へと突っ込んでしまった。激しくシールドを打ちつける雨粒。堪らず道路脇にある廃屋の軒下へと滑り込んだ。

車の流をただ眺めながら空を見つめる。普段は車で動きたいなど思いやしないのだが、この時ばかりは羨ましく思う。バイクでも合羽を着れば良いのではないか、と思うのが普通であろうが、残念ながらそれはターポリンの奥深くに眠っている。雨など降るとは微塵にも思ってはいなかったからだ。今更この雨の中荷物を下ろし、バックを引っ繰り返してまでそれを着ようとは思いもしなかった。
半時ほど時間を潰す。既に日も暮れ、道行く車はヘッドライトを灯し始めていた。未だ雨は降り止まない。だが、いつまでもここに留まるわけにも行かなかった。少しは小降りになった頃合いを見計らい、安楽の地を飛び出す。雨はマシになっているとはいえ、状況は更に悪化していた。対向車のライトがシールドを濡らす水滴に乱反射し、視界は無いに等しかった。前を行く車のテールランプを見失っては道筋を辿ることすら危うい。今となってはその赤い道標を機械的にトレースすることしか出来なかった。

(国道)八号線に合流すると雨脚はより一層激しさを増していった。その一粒一粒が身を凍えさせ、心を疲れさせていく。まだ夏も盛りだというのに真冬のように凍えていた。
前方の雲間に青白い閃光が走る。一、二、三と数を数えて距離を測る。さほど近くは無いようだ。山科辺りといったところか。雷雲が立ち去るのを待つのが得策だろう、そう思い道の駅で休息を取ることにした。

濡れた身体をタオルで拭い、僅かでも暖を取るためにホットコーヒーを啜る。震える手から、伝う喉元から温もりが拡がっていく。見上げれば暗黒の夜空には幾筋ものかみなりが渡り歩く。その全てがこれから向かう先から轟いているかと思うとより一層疲労感は増していった。

雷を遠目に迂回しながらジワリジワリと目的地へと近づいていく。その夜見た雷光の数は百を遙かに超え、100㎞にも満たない距離は八時間以上もの時間を費やさせた。そして長い旅は漸く終わりを告げた。


田峰観音(谷高山高勝寺)(ダミネカンノン(ヤタカサンコウショウジ))
所在地:愛知県北設楽郡設楽町田峰鍛治沢14 仏閣マップ
電話:0536-64-5028
本尊:十一面観世音菩薩
宗派:曹洞宗
創建:1470
札所:奥三河七観音4番
三河三観音