2011年6月10日金曜日

隠岐の魚屋がやる食堂(にしわき鮮魚店)

予算¥1,700(炊きこみ定食(ヒラマサ刺身、モズク、アワビの炊込ご飯、アラ汁、ブリのタイタン、漬物)¥1,100、アサヒスーパードライ中瓶¥600(イカのタイタン))

 まず目に付いたのは、軒先に下げられた巨大な鯣。それから、食事が出来るらしい事が書かれた貼紙に興味を惹かれ、扉を潜った。
 耳元で閑古鳥が囁きかけるような静けさを保った薄暗い店内。魚介の干物や冷蔵庫に並ぶ塩辛に一通り目を通した後、片隅に座るおばあさんに何が食べられるのかを尋ねると、刺身定食と炊きこみ定食があり、おかずはどちらも一緒で、後者はご飯がアワビの炊きこみご飯になると云う。他はテーブルに置いてあるメニューを見て欲しいと、店外の飲食スペースへと案内された。

 メニューには時価だというアワビに、いか(¥600)さざえ(¥250)岩ガキ(¥400)ヒオーギ貝(¥250)の刺身や、それらの焼きもんや酒蒸しに干物などが並んでいた。摩天崖上りでひとしきり水分を絞り出したボクは、すぐさまビールを頼み、それと炊きこみご飯、定食を、と続けた。炊きこみご飯、で一度言い淀んでしまったのは、炊きこみご飯定食ではなくて、炊きこみ定食だったな、なんて事に気付いたからだった。

 冷え冷えのビールと共に、「良かったら摘んでください」と運ばれてきたイカのタイタンを摘みながらグラスを傾ける。これは炊きこみ定食に付く小鉢が先に出てきたわけではないよな、サービスだよな、なんて勘ぐりながら、メニューの裏に書かれた

 「私共は 隠岐近海で捕れた魚介類の加工の仕事がしたくて始めた魚屋です。34年程になります。食堂は今年で12年目になり大変好評いただいております。
 その中でお話したり、食事をして頂いたりして ウン これは美味しかったから『お土産に』と言って頂くお客様も沢山居られまして、手土産やら地方発送も致しております。
 もし、その様なお考え・お気持ちが御座いましたら、住所等を書いて残して頂ければ、後日発送なり・お歳暮等のご案内もさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。詳細についてはご相談ください。
                                          にしかわ鮮魚店 店主敬白」

なんて紹介文を読み、これは善意だな、と恥じ入ってみたり、この刺身はなんですか?と尋ねてみたり、隠岐のヒラマサです、と答えられたり、この近海は氷見に負けない良い漁場なんですよ、なんて教えて貰ったり、そういえばおでんやのオネーさんも、本土から夜来て朝帰るなんて慌ただしく釣りをするだけのヒトも多く、しかも島後よりも島前の方が圧倒的に良く釣れ質も良い、なんて聞いて、次来るときは絶対に釣竿を持ってこようと思ったことを思い出したりしている内に、いつしか満席となっていた。そして皆「炊きこみ定食」ではなく「炊きこみご飯定食」と頼んでいくのを聞くに及び、ボクが間違ったのではなく名付けが間違っていただけなのだと納得していた。

 晩酌のアテに、120円と書かれた鯣の下足を買い求める。「100円になります」の支払いに「120円違うん?」とつっこまずに100円玉一枚だけ渡したのは決して20円が惜しかったからではなく、「120円て書いてまっせ」と言ったところで、「それでは120円頂きます」なんて言い直されるはずもなく、それを「サービスです」などと言わせるほど、ボクは無粋な人間ではないと勝手に思っているからだ。

にしわき鮮魚店
住所:島根県隠岐郡西ノ島町浦郷677 海鮮マップ
電話:08514-6-0518
営業時間:11:30~15:00
定休日:3月下旬~10月、営業期間中は無休
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2011年6月8日水曜日

セグウェイ

 そぼ降るなか、駅の駐輪所に佇む一台のセグウェイ。
 なんと見事にシュールな光景。

2011年6月6日月曜日

バングラデシュカリー@新家

予算¥1,370(生大¥777、冷酒¥600、チキンカリー、レバーカリー)

 バングラデシュ人のマルフルがUSAに帰るというので、バングラデシュカリーナイトが行われた。
 基本、東南アジア系よりもインドカリーに似た味わい。ホンマはもっとスパイシーな感じらしいのだが、日本人向けに控え目にされた辛さが丁度いい。まぁ、カレーでもカリーでも咖喱でも滅多に不味いもんにお目にかからないこのカリーと云う調理法は素晴らしいとしか云いようがない。

2011年6月3日金曜日

私は貝になりたい

 「私は貝になりたい」って映画、観ました?そんな質問に頭を振った。
 実はワタシも観たことないんですけど、その監督が日本中の海岸を見て回って、やっぱりここが良いって選んだんですよ。なんて、是非とも行ってみてください、と強く勧められた国賀海岸。

 カンカン照りの日差しを遮る木陰もなく、つづら折りの斜面を吹き下ろす向かい風に曝されながら、二度と上るもんか、なんてぼやきながら上っていった国賀海岸は摩天崖。確かにオネーさんが取り敢えずココ、と強く推すのも頷ける絶景が拡がっていた。

 それでも、こんなシンドイ思いをするのは一度で十分やろ、なんて思いながらの下りだったのだが、また隠岐を訪れた折には、なんでまたシンドイ思いをして上っているんやろ?と後悔しながらも上るアホの姿が容易に想像できるのが悔しい。



2011年6月1日水曜日

ウミウシを食べられるおでんや(おでん こと)

予算¥3,800(付出(鯵南蛮漬、青葱のぬた)、おでん(子持ちイカ、牛スジ肉、厚揚げ、春菊)、海牛(べこ)¥600、アサヒスーパードライ中瓶、高正宗一合(熱燗)x2、高正宗一合(ひや)、ハイボール¥400)

 山越えに継ぐ山越えと散々汗をかきまくっての日没となり、そこはそれで冷え切った身体の欲望に忠実に従って於こうと、おでんやの暖簾を潜ったのだった。カウンターには常連らしき男性がふたり。いいですか?と断りを入れ、少し離れたところに腰を据える。おでん、おでん、おでん、と、手を擦り合わせながら選んだのは牛すじ肉と厚あげに熱燗。そこは「がんも」を頼んだのだが、切れてしまった、というので厚あげへの変更であった。そこに勧められるがままに子持ちイカを追加する。

 つきだしはアジの南蛮漬に青葱のぬた。地元では、わけぎ以外をぬたにするなんて有り得ないワケで、当然その仕上がりはトロッとした滑りなどなく、一口二口と食べる内は、そこに何が出されたのかも分からなかったのだが、決して不味いというほどのモノでもなかった。青葱をぬたにして供するのもこの地方独特のモノかな?なんて思いながら、ホワイトボードに書かれた「下足のしくしく」ってなんですか?と尋ねる。
 「しくしく」ってのは、柔らかいって意味で、ただ単に下足焼いただけですと云う。それならそれを、なんて頼むのもなんの面白味も無いので、続けざまに本命的な「隠岐の珍味 海牛(べこ)」ってのは何かと尋ねた。それは、あの紫色の粘膜を吐き散らかすアメフラシの事だと云い、この辺り一般的に食すモノだという。今ぐらいまでが旬で、後は味が落ちるので冷凍しておくのだとか。それを甘辛く炒りつけたものがいわゆる「べこ」なのだそうだ。独特の磯臭さがあり、地元の人は懐かしがって食べるが、余所の人には勧められるようなモノではないとも云う。それでもボクは、小学生の頃から蛙の天麩羅やエスカルゴ、イナゴの佃煮なんかを好んで食べるようなゲテモン好きなので、当然、それを頼んだ。

 これはゴムか、と思わせる前歯を押し返すような噛応えに、舌にざらつくスポンジのような食感。そして後から微かに漂う独特な香り。
 「また食べたいって思うもんじゃないでしょ」と聞かれ、曖昧な笑いを返した。
 
 GWの頃は港の辺りでテントを張り釣りをする人が多いよ、と聞くに及び、それなら夕焼けの美しかったあの公園まで戻らなくても良いな、と思って、じっくりと腰を据えて呑み耽る。
 途中で見掛けた書き割りのように見事な滝は昔はなかったので人工ではないかという話や、ここが通っていれば大分楽やのにというトンネル工事が長いことほったらかしであることや、そこら彼処で見掛ける土俵に舟屋の近くで練習する子供力士に地元出身の幕内の話であったり、何処の店でも隠岐誉の看板を掲げているが地元の人は好まないので何処の店でも高正宗を出しているとか、海藻焼酎「いそっ子」は磯臭過ぎてこれもまた地元の人は誰も呑まないので買うなら熟成させた「わだつみの精」がオススメだとか、安くて美味しい寿司屋に中華料理屋、後は釣りの話だとか、その他、かなりプライベートに関わる話なんかを語らったりしての2時間ほどの滞在であった。



 予め用意しておいた「隠岐誉」を加えてほと良く酔いしめて漁協の隅で寝ていたのだが、未だ日も昇らぬ午前四時にイカ釣り漁船の爆音に起こされ、早々に退散するハメとなったのも今となっては良い思い出。

おでん こと
住所:島根県隠岐郡隠岐の島町港町天神原1-5 和食マップ
電話:08512-2-2397
営業時間:17:00~22:00
定休日:日曜
公式blog
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