2011年11月16日水曜日

酒房 なまくら

予算¥3,300(珠のつゆ(生原酒)冷酒一合¥800、華のつゆ(普通酒)燗一合¥600、にごり酒(純米)冷酒(小)¥600、雲のつゆ(本醸造)燗一合¥600、エイのひれ¥400、付出し(温泉卵))

 豊臣秀吉が絶賛したという天野酒。かつては四軒の造り酒屋が在ったと云うが、現在は西條酒造さんただ一軒残るのみとなっている。

 重厚な木製カウンターに照明を落とした店内にだんじりの鐘の音が風に乗り遠くから響いてくる。漬け物の盛り合わせ、じゃこおろし、胡麻豆腐にメザシなどとあくまで酒を楽しむための脇役なアテしか置かず、ビールすらなく自社で仕込んだ酒しか出さない潔さは、数十年己のこだわりを貫いてきたBarのような居心地の良さを漂わせていた。
 どっしりとした「珠のつゆ」の旨さに触れ、「華のつゆ」を燗で頼む。カウンターに埋込まれた銅製の燗どうこでじんわりと燗付けたそれは、ひやで呑むよりも尖ったところが脱け、丸みが拡がり燗あがりのする良い酒である。猪口を舐めるように味わううちに、いつしか常連さん達は消え、店内にはボク一人だけになっていた。

 「最近では祭の時ほど暇になってしまって」
 祭に酒は付き物だというのになんとも寂しい話である。
 「今頃はそない忙しくはないけど、十二月から三月くらいまでは季節限定であらばしりを出すからかなり混むんですよ」
 「そうそう、京阪南海沿線酒場ってのに載ったときも、よう賑わったんですわ」
 「スタンプを集めるとええもんが貰えたんやけど、もうおわってしもてますわ」と冊子を見せて頂いた。

 何とも云えぬ居やすさに何か追加しようと「みぞれ酒」ってのは酒をシャーベット状に凍らせたもんですか?なんて聞いてみる。
 「そうやけど、夏の暑い盛りに冷えたもんを出すためだけに置いてる酒であまりオススメはせえへん」「ほら、うっとこはビール置いてへんさかいその代わりやねん」
 「それやったら「にごり酒」を貰いますわ」と、まあ本当はこっちが頼みたかったって品を順当に頼む。
 「大吟醸のにごりやから旨いやろ」と言うだけあって粗野な中にも華やぎがあって、まっこと旨い酒である。
 火入れしていない酒は一般には売られていないので、これらの生酒はここでしか味わえないのが残念なくらいだ。

 「金剛山登ってはったんか?」
 「いえ、適当な山ん中でテント張って明日登るつもりです」
 「ほんなら線路を越えた処にある長野公園やったら、水道もトイレも東屋もあるからキャンプできるで」ってなことで幕営地も早々と決まったことだし、さらに腰を据えもう一本燗付けてもらう。
 この「雲のつゆ」はさほど深まらず、燗には普通酒「華のつゆ」の方がより旨く感じた。吊し斗瓶囲いの大吟醸や大吟醸古酒なども大層旨いそうだが、小で1,300円に1,500円と少々値が張りすぎるので今回は諦めて、次回のおたのしみにとっておく。

 そして晩酌にはやっぱり西條さんの酒を仕入れて行くのだった。

珠のつゆ(生原酒)本醸造 生酒 精米歩合61% Alc.19.5% 日本酒度+2.0 酸1.6 アミノ酸1.5 
華のつゆ(普通酒)普通酒 精米歩合65% Alc.15.3% 日本酒度+0.5 酸1.5 アミノ酸1.1
にごり酒(純米)純米酒
雲のつゆ(本醸造)本醸造 精米歩合61% Alc.15.6% 日本酒度+2.0 酸1.6 アミノ酸1.5

酒房 なまくら
住所:大阪府河内長野市長野町5-1 ノバティながの南館1F
電話:0721-56-0056
営業時間:16:30~22:00
定休日:木曜
公式サイト

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