予算¥1,580(生中¥380、菊正宗(熱燗)正一合¥300、酎ハイ(日ノ丸)¥250、黒霧島(ロック)6勺¥350、鶏肝のしょうが煮¥300、スジと大根のタイタン¥サービス)
おっと、いつまにやら二週間も間が開いてしまったが、ボクは全くもって旅をしていなかった、ってわけでもないんだ。その証拠に、今年に入ってからお山に登らなかった週は一度たりともないわけだし、そのお山が滋賀の雪山なんかだったりしたもんだから妙に懐具合が寂しかったりしているわけだ。
そんな日常的な気配さえする在り来たりの山行のとある一日を、問わず語りに呟いてみようと思う。
あれは忘れもしない一月は下旬?のある一日のことだった。金剛山を登って、方違さんで祓ってもらって、湊潮湯で湯浴みをし、晴一で腹を満たした後でのことだった。いつもどおりに消費した分の燃料補給に、と湊へ赴いていたのだけれど、田宮酒店は休みやし犬吉が開くまでにはまだ時間があった。そこで何とはなしに犬吉に似た名前の鶴吉って立呑屋を訪れたのだった。
L字型のカウンターには、円形に切り抜いた板が座面となった19㍑の空き樽が12、3ほど据え付けられている。そしてカウンターの上には大鉢に盛られた料理。雑多に拡げられたままの新聞。奥のボードに並ぶ迷うほどのアテの数々。おでんの鍋がコトコトと音を立て、圧力鍋がシュンシュンと湯気を振りまく。地元民しか訪れませんってな真っ当な立呑屋な佇まいがなんとも居心地がよい。
とりあえず頼んだ生中を片手に腹は空いてはいないがアテのひとつも頼まなければな、とメニューを睨みつけるが、なかなかに決めかね、大鉢の中身を尋ねてみたりしながら結局のところ、普通に無難な鶏肝なんてところに落ち着いた。生姜の利いた鶏肝もまた、特に洒落たワケでもなく濃ゆめの味付けが酒を勧める可もなく不可もなくな真に真っ当な立呑屋のアテで、これもまた嬉しくもあるのであった。
「ちょっと食べてみ」と常連さんに小鉢が差しだされる。おもむろに頬張り、ブホッと吹き出す。
「熱すぎるわ!」と何ものかに遣り場のない怒りを露わにする。
「アホやなぁ、熱いことなんて分かり切ってるやろ」と女将さんは呆れる。
「そない熱いなんて思わへんわ」なんて憤懣やるかたない様子でぶつくさと歯切れの悪い言葉を続ける。
「そちらさんもどうぞ」とご相伴に預かったのは薄めのダシで炊かれたスジと大根で、先ほどまで蒸気を振りまいていた鍋の中身であった。ボクはブホッといかないように小さく切り分け冷まして頂く。そして気になっていたメニューについて質問してみた。各種酎ハイが並ぶ中の「梅ざんまい」の三昧具合とか「日の丸」とは何が入っているのかとかを、だ。練り梅に梅干と梅シロップをたっぷりと加えたのだと云う。かなり甘いけどな、と付け加える。それなら「日の丸」は梅干だろう、と予想通りの答えが返ってきた。
話題がいつしか地震の話へと変わっていったのは、つい先日富士山で地震があったし、震災当時ボクは堺に避難していたのだから、当然と云えば当然の成り行きだった。
もちろん堺は地震の被害など全くと云っていいほどなかったのだが、ただ、当時勤めていた堺市内の会社への道は大渋滞しており、普段の五倍も時間がかかったそうな。
そんな他愛もない話を積もり重ねていったわけだが、今思い返してみてもあまりと云えばあまりにすぎるほどに覚えてなくて、気がつけばいつも通りに水道筋あたりで呑み重ねていたのだった。
偉そうに、旅だの山だの云っていたわりに近場過ぎて日常から全然離れていなかったりもしたので、次回はもう少し遠いところの話をしたいと思う。
立呑処 鶴吉
住所:大阪府堺市堺区出島海岸通1-12-19
電話:072-245-5337
席数:カウンター12席(生樽が椅子)
0 件のコメント:
コメントを投稿