2012年1月6日金曜日

酒場ヤマジ

予算¥2,050(サッポロ黒ラベル大瓶、カクテスサワー(焼酎千石20%+カクテス)、にごり酒正一合、熱燗正一合、おもろ¥400、このしろの酢¥300、天豆腐¥250)

 以前袋井を訪れた折に、たまたま立寄った「ヤマジ酒店」で、たまたま「どまん中」を買い求め、たまたま併設された「酒場ヤマジ」を見つけて、一度くらいは立寄ってみたいな、と思いつつもいざ訪れてみるとなるとお盆休みだったりして、なかなかに中へと入ることができないでいた「酒場ヤマジ」へとまた性懲りもなく向かった。

 そしていざ門を潜り酒屋の奥の路地を抜け、そこにある硝子戸を開いてみるもだあれもおれへん。とは云っても鍵が掛かっているわけでもなく、休みというワケでもないみたいやしな、なんて戸惑っていると、後ろから付いてきはった方が「居ませんか、呼んできます」と言わはるので、もう帰ったろかなんて思いを抑えしばし待った。
 
 まずは大瓶からはじめ郷土料理の「おもろ」を頼む。入口に「おもろあります」って貼紙があったし、幾度となくこの地を訪れてはいるが一度として「おもろ」を食べたことがないわけで、やはりその辺りは外されへんかった。そしてそれは予想以上に豪快な「おもろ」であって、豚足丸ごと一本出てくるってな具合やった。その姿たるや、西成辺りの豚足がほんのりと紅を注した遊女であるほど上品に思える無骨さであり、今まさに農作業を終え、頬っ被りを外した浅黒く日に焼けた村娘さながらってな感じであった。その酒と醤油でじっくりと煮込んだ「おもろ」の味わいはと云えば、たっぷりとかけられた胡椒の香りといい、添えられた山葵の清涼感といい、関西のいわゆる「豚足」とはまったく違った独特な味わい深いものだった。

 この常連さんばかりが集うこの店に見慣れない顔は珍しいそうで、色々と質問攻めにあっていく。どこから来たのか?なぜこの店を知ったのか?そんな在り来りでもあり真っ当でもある問いかけに答えていると、「神戸から来た人が居るって聞いて」なんて娘さんまで現れ、同じような質問が繰り返されていく。そんな受け答えの端々に「そうなんだー」などと標準語的な合いの手が入る。それは常連さん達への言葉遣いと異なった他所もんへの気の使いようみたいな感じがして、その事が気に掛かり上手く話に乗ることができないでいた。

 後から訪れた常連さんに倣いカクテスのサワーとかいうもんを頼む。「生ぶどう酒を加えたレモン果汁入りアルカリ性炭酸飲料」ってなそれは、危うく生産中止になるところをお願いして作ってもらっているのだそうだ。ハイボールのまがいもん的な「ホイス」や、当時高価だったビールの代用品な「ホッピー」なんかよりも、このシャンパンもどき的な「カクテス」の方がボクの好みに合うのだった。

 程良く酔いも廻り、勝手に鼻に突いていた東京弁的な響きも気にならなくなって心地よくなってきた頃合ににごり酒へと遷る。わざわざ新しい一升瓶を開けてくれて「冷蔵庫に入れていても発酵が進むから、昔は穴の開いた栓しか出来なかったんです」なんて話を聞きながらこのしろを摘む。

 さて次は何にしようかと思案しているとそれを見透かされたように「天豆腐」が美味しいよ、なんて勧められる。湯豆腐にキスの天ぷらを乗せてとろみのきつい甘い天つゆをたっぷりと注いだその濃ゆい味わいは、不思議と熱燗に合う。「この天豆腐ってのもこの辺り食べ方なんですか?」と聞いてみると「わたしが好きだから出しているだけ、美味しいでしょ?」と軽く返された。

酒場ヤマジ
住所:静岡県袋井市川井416
電話:0538-43-3534
営業時間:16:00~21:00
定休日:日曜

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